第18回 授賞式レポート

2022年3月18日、如水会館にて、3年ぶりに「第18回ガラスびんアワード」授賞式が行われました。その模様をお伝えします。

山村 幸治会長より開会の挨拶

日本ガラスびん協会会長の山村(日本山村硝子株式会社 代表取締役 社長執行役員)でございます。本日は、3月期末の大変お忙しい時期にご出席いただきまして、ありがとうございます。受賞関係各社の皆様、プレスの皆様、そして審査の労をお取りいただきましたリリーフランキーさん、富永美樹さんには、この場をお借りしまして厚く御礼を申し上げます。本日、ここで3年ぶりに第18回ガラスびんアワード授賞式を開催することができました。新型コロナウイルス感染症の蔓延が続いておりまして、リアルで開催できるのかどうかという議論もございました。しっかりと感染対策を徹底しながら、開催させていただきます。例年ですと、180名ほどの方々が本会場に入られるのですが、本日は50名程度ということで少々寂しい気もいたしますが、盛大に盛り上げてまいりたいと思っております。

さて、今年のエントリー総数は214、298本のご応募をいただきました。今回から通年エントリーができるようになり、インターネットからの受付やお客様からのダイレクトエントリーも可能になるなど、少しずつガラスびんアワードも進化をしております。コロナ禍が長引き、お客様の開発活動に制約がかかっている中で、本数は昨年よりも減少しておりますが、かなり個性的なガラスびんも生まれています。近年「SDGs」という言葉が日常的に使われるようになりました。そのため、エントリー商品の中には通常のプラスチック容器をガラスびんに変えたり、リターナブルびんを新たに開発してリユースシステムを確立したり、フードロス食材を有効活用したり、売上の一部を環境保護活用の支援に繋げようとしたりといった商品もございました。

そのようなエントリー商品の中から、さる2月3日にリリー・フランキー審査委員長と富永美樹審査委員をお迎えして最終審査会を開催。各賞6点と日本ガラスびん協会特別賞3点が決定いたしました。本日の授賞式では、受賞商品をご紹介させていただきます。
当協会は今年で創立70周年を迎えました。皆様方のご支援に感謝を申し上げるとともに、これからも業界の発展のために努力を重ねてまいりますので、引き続きご指導をお願いしたく思っております。最後になりますが、ご出席の皆様方のご健勝と所属企業様のご発展、そして新型コロナウイルス感染症の蔓延が収まって、昔のような日々が戻ることを祈念いたしまして、ご挨拶とさせていただきます。

受賞企業のスピーチ

最優秀賞

 

創家 大坂屋 純米大吟醸720ml瓶詰

 1711年に酒造りを始めた大関は、今年度で310周年を迎えました。これを機に、事業を興したご先祖様の思いに立ち返り、先が見えない時代でもチャレンジ精神を喚起しようというメッセージ性を込めたブランドが「創家 大坂屋」です。美しい流線型に設計された本商品は、びんの色に水墨画を思わせるような薄墨色、ラベルには日本酒の原点でもある米作りをイメージした棚田がモチーフになっております。
びんは再現性が高く、表現も自由、芸術性も高められる素材です。また飲料や食品の容器としても、非常に優れていると思っております。今後はびんに詰める日本酒やリキュール作りにも技術研鑽を重ねてまいります。本日はありがとうございました。

大関株式会社
長部 訓子様

優秀賞

 

蔵女 the kurajo

この商品は、オリジナルの角びんに、倉敷市児島で岡山デニムを作られているジャパンブルーさんのデニムを「纏う」デザインが特徴です。また、19の蔵元の女性杜氏さんや女性蔵人さんが日本酒造りを手がけたことで「蔵女」と名が付いております。なでしこジャパンのように、全国の蔵元で活躍する女性が集まれば、アジアや世界に打って出ることができるのではないかと、6年ほど前から構想を進めてまいりました。
弊社は企画やデザインの会社ですが、今後も色々なオリジナルびんを造っていきたいと思っております。本日はありがとうございました。

酒楽。(株式会社バウハウス
渡邉 勝則様

優秀賞

 

百花百獣 謹白(ひゃっかひゃくじゅう きんぱく)

私が北京の大学を卒業したという経歴もあり、5年ほど前に本プロジェクトがスタートしました。中国の「白酒(ばいじょう)」と呼ばれる蒸留酒と、日本の清酒文化の融合を目指して商品化したお酒です。中国の工場を訪問して製造方法を学び、日本最北の酒蔵である、北海道増毛町の国稀酒造さんで完成させました。吟醸香に注目し、白酒の力強さと清酒のふくよかさを併せ持ち、日本食にも中華料理にも合うお酒ができたのではないかと思っております。今後も皆様に愛されるブランドになるように、精進してまいります。本日はどうもありがとうございました。

株式会社SUPLUS(サプラス)
進藤 圭一郎様

環境賞

 

From AQUAリターナブルびん

弊社では、上越新幹線のトンネルの湧水を活用したミネラルウォーター「From AQUA」を展開しております。その始まりは1984年に発売された「大清水」というリターナブルびんのミネラルウォーターです。その後、2008年に「谷川連峰のうるおい天然水」を発売。2021年に既存商品をリニューアルし、旗艦商品「From AQUA リターナルびん」を発売しました。リユースという機能性や水のふるさと、谷川連峰一ノ倉沢のデザインについても評価いただき、大変嬉しく思っております。引き続き、リターナブルびんをはじめとする環境に配慮した商品を作っていきたいです。本日はありがとうございました。

株式会社JR東日本クロスステーション
ウォータービジネスカンパニー
千田 浩也様

審査員賞

 

AMAMI RABBIT

私たちは東京から約1200km離れた奄美大島で、平成8年に始まった若い蔵です。人口約1700人の宇検村(うけんそん)に根付き、雇用促進や村おこしにも取り組んでいます。お酒は色々な可能性を秘めているからこそ、この商品もお酒から離れていこうという考え方で作りました。2021年7月に奄美大島は世界自然遺産に登録され、観光客が増えている状況です。そこで、絶滅危惧種であるアマミノクロウサギや山を守るために、売上の一部を寄付する自然環境保護プロジェクトにも役立てられたらと思っています。
最後に奄美大島の言葉で、リリー・フランキー兄(あに)、ありがっさまりょうた!

株式会社奄美大島開運酒造
泊 浩伸様

審査員賞

 

海へ…Step ギフトBOX
森と…Step ギフトBOX

平成生まれの洗剤に頼らない製品づくりに取り組む、代表兼研究者のきむちんと申します。私は環境活動家として、ゴミ拾いなどの環境活動を45年続けてきました。その中で、毎日使える環境に優しいものを作りたいと思い、100%生分解性で洗濯して脱水するだけという「すすぎ0回」の洗濯用洗剤を開発しました。
ガラスの器の歴史は紀元前にまで遡ります。それほど昔から生活に密着していたのです。持てば重たいし、横にすると漏れ、落とすと割れます。だからこそ大事に使って、1000年先を生きる子どもたちのためにも、ガラスびんを提案したい。そんな想いで作りました。今後もガラスびんをみんなで可愛がっていきましょう。

有限会社がんこ本舗
木村 “きむちん” 正宏様

ガラスびん協会賞

 

ファイブミニ

1988年に手軽に食物繊維が摂れる飲料として発売されたファイブミニは、1996年に特定保健用食品としての許可表示を取得。小びんという形状を30年以上もの間変えることなく、皆様に愛されてきた商品です。
近年では、新規顧客獲得をブランドの課題と捉えておりましたが、SNSで話題になったことをきっかけに、若年層の女性とも新たに接点を持つことができました。今後は、ファイブミニを飲んだことがない方や食物繊維が不足している方に、ブランドの価値と「びん」だからこその美味しさを伝えてまいります。このたびは、本当にありがとうございました。

大塚製薬株式会社
小出 莉央様

ガラスびん協会賞

 

ハートランドビール 330ml びん
ハートランドビール 500ml びん

技術開発当時から商品を育てているブランド担当から手紙を託されましたので、代読させていただきます。「ハートランドビールは『素(そ・もと)-モノ本来の価値の発見』をコンセプトに、ビールの本質や素材の良さをシンプルに追求した商品として、30年以上多くのお客様に愛されてきた商品です。このシンプルさをびんの形状、エンボス加工、何度も使えるリターナブルでラベルレスのボトルに体現してきました。まさにガラスびんだからこそのデザイン価値だと考えております。これから先も変わらずご愛顧いただけるよう、商品に磨きをかけていく所存です」私も技術開発担当として、さらなる発展のために尽力してまいります。このたびは、ありがとうございました。

キリンビール株式会社
柳田 典子様

ガラスびん協会賞

 

食卓塩 100g

食卓塩100gのデザインは、1969年に現在の形状となり、びんへの直接印刷もずっと継続してきました。長年ご愛顧いただいている理由は、塩の品質もあると思うのですが、容器が高品質なびんであったことも大きく貢献していると思います。特性としては、びん自体の重さがあるからこその安定感、丸みや大きさが手のひらサイズで馴染むことによる使いやすさ、中身を守る高い保護性。そして、落としても意外に割れにくい強度の高さだと認識しております。
長年、優れたびんを安定的に製造供給していただきました、第一硝子様に改めて感謝を申し上げるとともに、業界のさらなるご発展を祈念しております。

公益財団法人塩事業センター
高野 幸一様

審査委員からの祝辞

審査委員 富永美樹

私たちはコロナ禍が続いた2年と少しの間、自分たちの行動や時間の使い方を上手に変化させて、この状況に順応してきました。それでもやっぱり、直接会って伝えないと伝わらない想いがあることも分かってきたんですよね。今年は、協会のみなさんやリリーさん、私が想いを込めて選んだ商品を、自分たちの言葉で直接目を見てお伝えできた。これに勝るものはないと思っています。
審査委員を務めるようになってから、これまでガラスびんの進化をたくさん学ばせていただきました。こんな色やデザインができるのか、こんなに軽いのか、ガラスびんは変わっていくんだなと。

一方で、私たちが生まれたときからずっとそばにある安心感があって、先ほどのお話ですと紀元前からですか!? 今の不安定な世の中を生きていくにあたって、心の拠り所になってくれる、大事な存在なのではないかとも思いました。だからこそ、ガラスびんは“変わりゆくガラスびん”であってほしいし、“変わらないガラスびん”でもあってほしい。悲しいニュースを目にすることが多い昨今で、ガラスびんは人の心に訴えかける郷愁のようなものが感じられます。また良い商品を作ってぜひエントリーしてください。おめでとうございました。

審査委員長 リリー・フランキー

映画の中で、いわゆる人が緊迫したり不幸を表したりするシーンには、だいたいガラスの割れる音がします。その音が、やっぱり人が一番望まない環境にあるからこそ、聞こえてくるのでしょうね。一昨日も大きな地震がありましたが、戦争と疫病と天災が同時期に起きるという中で、早くガラスの割れる音が聞こえない社会になってもらいたいですし、これからガラスびん製品の存在感や責任感が、社会においてさらに増していくことだと思います。日本は外国と比べて圧倒的にプラスチックの依存度が高いですし、鼻にストローが刺さったウミガメを見て何かを思い出したとしたら、まだすごく意識が低いところから始めなければいけない段階です。

デザインは、その時代の社会と世相を表すもので、今年受賞されたどの商品もコロナ禍で色々なことを考えて作られていたのが印象的でした。これからどんどん脱プラスチックは進んでいくでしょう。環境問題やサスティナブルへの関心が増すとともに、ガラスびんの役割も年々増していくと思います。望ましい環境が整っていく中で、みなさんと共に良いものを生み出し、社会に還元できるようにできればと思っています。本日はおめでとうございました。

当日の様子