2013年12月27日

広報委員会研修会レポート 寺西化学工業株式会社様 工場見学

あの商品がガラスびん?

 このガラスびん、いったい何のびんだと思いますか?皆さんも、一度は使ってみたり手に取った事があるのではないでしょうか?
 2013年、この商品は発売60周年を迎えました。およそ10億本を製造・販売され、今日も私たちの生活に馴染みの深い商品なのです。
 上のガラスびんから素晴らしい商品を造り続けていらっしゃるのは、寺西化学工業株式会社様。
 この商品は「ガラスびんアワード2012」において、日本ガラスびん協会特別賞を受賞されました。今回、授賞のお礼と日頃よりガラスびんをご愛顧いただいていることへの感謝を込め、10月上旬に取材をさせていただきました。併せて、普段なかなか見られない工場の見学もさせていただきました。

<ご対応者>

・代表取締役社長 寺西 寿三様
・本社営業部部長  布谷 美一様
・守口工場長  銘苅 久雄様
・守口工場検査室主任  鶴藤 信吾様

■製造ライン見学

【商品使用部品】

こちらの部品があの商品のパーツ。もうわかりましたか?
国民的商品の「マジックインキ(大型)」です。その製造工程をまとめました。

1.ガラスびんを取り出す

 まずは、納品されたガラスびんの入ったカートンをアンケーサーに乗せるのですが、ここでびっくり。カートンを逆さにした天地逆の逆さ入れ。ワンウェイカートンの開封時の利便性からこの手法を取っているとのこと。カートンから、バルク包装のように一段一段びんをラインに押し出します。

・趣のある工場に、ガラスびんメーカーの私たちには、聞き覚えのあるカチンカチンの音。ガラスびんが触れ合う音と共に、ガラスびんが製造ラインを流れていきます。

・ガラスびんの底がカートンの天面に。規則正しく並んだガラスびんは横にしても崩れません。

2.充填

 さっそく充填開始です。工場建屋にあるインキタンクからパイプラインでインキを供給します。40個のセルのついた充填機は一分間に135本充填可能で、一日に6万本生産が可能とのことです。

・二本のノズルからインキが充填されます。

・漆黒のインキからどんなものが描かれていくのか・・・まさにここが出発点。

~インキについて~
 マジックインキは上品な光沢があります。すべての色合いがとっても鮮やか。特に黒の深い照りのある色合いはマジックインキの特徴ではないでしょうか。また光に当たった時の色あせが少なく、いろいろなものに書くことができます。

3.中芯装填

 フィルター状の中芯を圧縮しながら装填します。中芯を入れてからインキを充填するとインキが漏れるため、この順番なんだそうです。

・ガラスびんの口よりも太い中芯がしっかりとインキを吸い、筆記性能を高めます。

・中芯がコンベアで次々と運ばれていく。

4.パッキン装着

 樹脂製パッキンと糊で部材との密着度を高め、気密性を保持します。

・パーツフィーダーの微振動により上下を揃え、揃わないものは再びターンテーブルに戻る仕組み。

・インキが充填されたガラスびんにパッキンを被せます。

5.ペン先装着

 ペン先を装着したホルダーをガラスびんにしっかり装着します。

・こちらもパーツフィーダーの微振動による重さを生かした上下揃え。

・上からペン先がスライドされガラスびんにねじ込みます。

6.検査

 目視でペン先の露出長や不良品、びんの外観もチェックします。ベテランの目利きでミクロの変化も見逃しません。ここではまだペン先は白いまま。ここからインキがじわりじわりと染み渡っていきます。

・ラインのスピードに合わせてリズミカルにチェック。1本1本検品する「職人魂」を肌で感じます。

7.キャップ装着

 キャップを閉めます。ペン先の検査があるためにペン先とキャップは別工程になっています。

・三度目の微振動による上下揃え。

・一気にキャップを被せます。

・黒いボトルの行進!

8.フィルム装着

 円筒状のPETフィルムに熱を加え収縮させます。このフィルムは発売当初はビスコが装着されていて、当初のインキの蒸発を防ぐ役割をしていました。今はガラスびんの割れ・傷つき防止で装着しているそうです。

・子供のハードな使用にも耐えられるようになっています。

9.紙ラベル装着

 ここでやっと見覚えのある「?」マークのラベルを装着。商品としての顔の出来上がりです。

・PETフィルムの上にラベルを装着していたなんて気づきませんでした!

・私たちの良く知るカタチに!

10.個包装

 自動的に一個箱に包装されます。箱には特長、注意事項、マジックインキの歴史や商品情報が載せられています。ガラスびんのラベルに書きつくせない情報がぎゅぎゅっと詰め込まれています。

・下から箱が開いてボトルが箱に吸い込まれていきます。

11.包装

 お客様のリクエストにより包装形態を変え、同色3個シュリンク、6個シュリンクがあり、この日は単色の10個1セットの箱に詰められていました。他にも8色セット、12色セット、15色セットがあります。
 最後にカートンに詰められ出荷を待ちます。

■寺西 寿三 代表取締役社長より

発売当初とほぼ変わらない形でガラスびんを使い続けています。手になじむサイズと、ガラスびんならではの適度な重さに良さがあると思います。販売10億本と60周年にあたる今年に、日本ガラスびん協会特別賞を頂き本当にありがとうございます。

歴史について

・多数の表彰状がその実績をたたえています。

 戦後「アメリカ産業視察団」の一行に当時、株式会社内田洋行さんの社長であった内田憲民氏がおられ、視察の間に内田社長が買い求められた色々な商品の中に「スピードライ社」が発売しているフェルト素材のペン先を使った新しいタイプの筆記具がありました。アメリカでヒットしている新しい筆記具という話でした。視察団帰国後の見本市会場でこれを見つけた寺西長一氏は、さっそく内田氏にこの新しいペンの研究開発をしたいと申し出ました。
 ところが、その筆記具は、容器もキャップもバラバラに壊れてしまっており、ペン先もカラカラに乾いた状態でした。しかし、残された部品から油溶性インキがフェルトのペン先から出るという構造であろうと考え、開発を始めました。
 当時、日本では水性インキが主流のなか、油溶性の染料を自社で開発することとなり数々の試行錯誤を経て、油性ペンの開発に至りました。株式会社内田洋行さんと共に開発し発売したため、「マジックインキ」の商標登録は「株式会社内田洋行」になっているのです。

商品名称の由来

「どんなものにもよく書ける」これまでにない斬新な筆記具ということから、「魔法のインキ」という意味を込めて「マジックインキ」と命名されました。

実は環境に優しいリユース商品!

 発売当初から補充用インキや替えペン先も販売しています。繰り返し使えて経済的で、かつ環境に優しいのです。

現在では

 お客様のニーズに答え、色数も15色あります。北欧など海外にも輸出しております。
 インキの種類は油性系、アルコール系、水性系に大別され、さらにそれぞれ顔料系、染料系があり、お客様のニーズに合わせた商品開発を行っています。

知って納得!マジックインキのビックリ使用方法
  1. 札幌雪まつりの雪像の下絵描きにはマジックインキが使われているそうです。なんと氷の表面にも書けるのです。まさに「マジック」なインキですね。
  2. 茶色はあるところで沢山使われています。それは仏具店。速乾性で木に馴染みやすいので、ちょっとしたキズに最適です。色が合えば家庭のフローリング等にも使えます。

■見学後記

 なかなか見られない工場と貴重なお話しから、商品に対するこだわりと、誇りを感じました。
 生産工程では60年間蓄積されたノウハウがたくさん詰まっていました。そんなラインを流れるたくさんのマジックインキを見ていたら、手になじむガラスびんならではの心地よい重みを感じながら、ペンを走らせている時のワクワク感がよみがえりました。
 また、応接室にて、ズラっと並んだマジックインキが目に入った時には、絵心をくすぐられてしまいました。力を入れなくとも握ってスラスラ書けたり、その持ち方も様々。小さい子供から大人まで幅広い世代に愛されている理由の一つかもしれません。
 ガラスびんという容器の特性を生かし、インクの密封性を高め、リユースできる商品作りなど、ガラスびんに対する理解の高さを感じました。ガラスびん入りの筆記具として、またガラスびんの可能性を伝える商品として、ガラスびんメーカーとして貴重な存在だと改めて思いました。
 これからのご発展とマジックインキが多くの人々に愛用され続けて欲しいと祈願し、見学を終えました。

工場の門前にて記念撮影。

※「マジック」、「マジックインキ」は、株式会社内田洋行の登録商標です。