2018年04月11日

齋藤会長がビバリッジジャパン誌の特別インタビューを受けました

特別インタビュー:日本ガラスびん協会 齋藤信雄氏

消費者とガラスびんの懸け橋を目指す

 日本ガラスびん協会は,自動製びん会社6社を正会員とする業界団体だ。ガラスびんの生産量は,他素材との競争や需要の減少により出荷量が年々減少している。そこで同協会は,ガラスびんの価値向上や普及啓発,そして需要創造などを主目的に事業活動を行なっている。なかでも広報活動は同協会の中軸となっている。そこでビバリッジ ジャパンは,2017年に同協会会長に就任した齋藤信雄氏(東洋ガラス代表取締役社長)に,日本ガラスびん協会の普及啓発や広報活動を中心に聞いた。

ーガラスびん市場の縮小が止まりません
 齋藤会長,以下会長)2017年の出荷量は109万9,788トン(前年比97.8%),約2万トンの減少になりました。ガラスびん市場では,「ガラスびんである必要性」が少なかったカテゴリーで他素材への転換が見られます。ガラスびんには情緒価値があるのですが,利便性から他素材に流出しているようです。
 日本の流通構造が変化し,CVSやスーパー、ドラッグストアの台頭により利便性や簡便性の追求が進んだ一方で,店頭に置かれる商品が限られています。こうしたなかでガラスびんは,その良さを活かせる付加価値ある製品に限られつつあります。要するに嗜好品になるわけですが,製びんカテゴリーでは,洋酒・雑酒(ウイスキーやスピリッツ、ワイン等)での可能性が高まると考えています。
  また,Eコマースは付加価値製品を販売するチャネルとして適していると思います。そのほかにも高速道路のサービスエリアが休憩だけではなく買物を楽しむ場所になっているなど,実は流通チャネルも多様化が進んでいます。

ー消費者に直接ガラスびんの良さを伝える活動が注目です
 会長)私は,消費者に安全安心や環境配慮,また素材感といった点を感じていただきたいと考えています。そのためのアピールをしなければならないと思っています。
 日本ガラスびん協会は,ガラスびんの普及啓発と広報活動に重点を置いています。そして製品のおいしさや楽しみ方を通じて,消費者にガラスびんに親しんでいただきたいと思っています。当協会では様々な広報活動を行なっております。その一つである「ガラスびん応援隊」は,入隊者が年々増加しており,現在は50名を突破しました。
 また全国清涼飲料連合会とコラボレーションした「銭湯企画」も好評で,2018年度は愛知県や神奈川県へも広がっていきます。また2017年度に14回目を迎える「ガラスびんアワード」は,ガラスびん業界を盛り上げるイベントとして定着しました。同時に次のステップに向け抜本的な改革を進める時期にもきていると思います。
 さらに2018年度は,新しい施策を行ないます。東京・青山で週末に開催されている「青山ファーマーズマーケット」に当協会も参加することにいたしました。このマーケットは各地域産の農産物や加工品を販売しているもので,大変に高い集客力があります。
 そこで当協会と青山ファーマーズマーケットが提携し、「TOKYO BINZUME CLUB」を創設,出店している生産者とオリジナルのびん詰め製品を開発・販売します。ヨーロッパでは生産者自身でガラスびん詰め製品を生産・販売しています。今回の企画は,それに近いといえます。さらに当協会では,ECサイトの立ち上げも予定しており,広く通販でも購入できるようにする計画です。
 これらはガラスびんの良さをアピールするだけではなく,食品ロス対策にもなります。さらに社会的意義もあり,消費者にもメリットがある活動になると考えています。これらの活動を消費者にアピールすることで,新たな需要を換気したいと思います。

ー地球環境をめぐる議論が活発になっています
 会長)環境問題は,これまでのようにはいかなくなっています。たとえばマイクロプラスチック,フードロスなど,新しい環境問題が次々と浮上してきています。
 ガラスびんは自然由来の原料から作られ,自然に帰ることができる環境に優しい容器です。世界でSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)が企業の経営課題になっているなか,ガラスびんへの注目が高まってほしいと思います。
 また,消費者のなかでも主婦層は環境問題に関心があり,ガラスびんユーザーになりえます。しかし,実際にはスーパーなどの店頭にガラスびん製品がないため,購入できないという実態があります。それでも環境をキーワードにした流通・消費行動の変化が現われるはずです。
 そのためにはガラスびんの素材価値(安心・安全)や付加価値のアピールが重要です。すでに会員各社では小学生などの工場見学を受け入れているほか,出前授業でもガラスびんをPRしています。こうした活動を継続していくことが重要と考えています。

ー日本のガラスびんが抱える課題は?
 会長)たとえばデザインです。酒類の世界的な展示会である「ProWein」を視察すると,世界の多彩なデザインのガラスびんを見ることができます。そこでは日本のガラスびんも大いに学ぶ点があると思います。世界に伍して戦えるようなデザインが必要です。ガラスびんメーカーの製販若手に期待したいです。新しいアイデアと各社の知恵を結集し,ガラスの良さをアピールしなくてはなりません。

ーありがとうございました

聞き手:ビバリッジジャパン・埴 義彦
出典 :ビバリッジジャパン NO.435より
関連URL:http://www.beverage-j.co.jp