2019年04月02日

広報委員会取材レポート 株式会社大島椿本舗 様 工場見学

 日本ガラスびん協会広報委員会では、ガラスびんに関する広報活動と日頃からのご愛顧に感謝を込めて、ガラスびんに関連したさまざまな場所を訪問しています。
 今回は、11月中旬、秋晴れの心地良い日よりの中、「第14回ガラスびんアワード2017」において日本ガラスびん協会特別賞を受賞されました、株式会社大島椿本舗様(東京都八王子市)及び企業発祥の地、株式会社大島椿製油所様(東京都大島町)を取材訪問させていただきました。

(写真右)日本ガラスびん協会特別賞受賞『大島椿』。椿の種から搾った天然の椿油100%

株式会社大島椿本舗に到着後、玄関を入ると、壁一面に大島椿の商品と、大島椿公式キャラクターの『つばきーゆ☆』が迎えてくれました!

ご対応者

  • 代表取締役社長 岡田 一郎 様
  • 品質保証管理部部長 斉藤 敦 様
  • 大島椿製油所店長 河津 覚 様
  • 広報部マネージャー 坂本 薫 様
  • 広報部 内田 貴子 様
  • ご対応いただいた社員の皆様

見学内容

  1. 大島椿グループについて
  2. 製造ライン見学
  3. 伊豆大島・株式会社大島椿製油所見学
  4. 見学を終えて
  5. 質疑応答

1. 大島椿グループについて

 はじめに、岡田社長様よりご挨拶をいただき、大島椿グループの成り立ちについてお話いただきました。

 大島椿グループは製造部門の株式会社大島椿本舗、販売部門の大島椿株式会社、創業の地に残る株式会社大島椿製油所の3社体制で営業しています。

 元々は、1963年まで、東京文京区と伊豆大島を拠点とされていましたが、第二次世界大戦により、文京区から八王子市西浅川町に疎開をすることとなり、終戦後八王子に自社工場を建設されました。化粧品メーカーで自社工場を持つ会社は、少ないそうですが、大島椿では、『より良い商品を作り、お客様に届けたい』という創業当初からの思いで自社工場を設立されたとの事です。

 次に、品質保証管理部 斉藤部長様より商品や株式会社大島椿本舗について、スライドを用いてご説明いただきました。

 1927年に伊豆大島で誕生した椿油『大島椿』は、数年後には有名デパートでも取り扱われるようになります。そして、1950年頃から、大島のアンコさん(島内での女性の呼び方)と共に宣伝バスに乗り、全国津々浦々まで行脚し、宣伝活動をおこない、日本中に浸透していきました。

 1960年代には、アメリカ本土とハワイへ輸出を始め、現在では、様々な国と地域に輸出され、親しまれています。

 商品の特徴として、一般的な化粧品は、油分としてミネラルオイルを使用しますが、大島椿本舗では、製造する商品全てに椿油を使用しています。また、自社独自の原料『ツバキ石けん』からも製品を製造しています。

 ツバキ石けんとは、椿油を鹸化(けんか)して作る石けんで、細かな泡だち、高い洗浄力、肌にやさしいのが特徴です。また最高の椿油製品を作り出すために、原材料の品質確保や、自社基準に基づく、品質管理を徹底しています。

 様々な化粧品を展開する大島椿グループですが、食用の椿油『椿の金ぷら油』も通信販売限定で製造販売しています。こちらで揚げる天ぷらは、クセがなく大変美味だそうで、2015年のミラノ万博では日本館のレストランにも採用されました。

 また、ご案内いただいた部屋には、創業当時の製造方法や、椿の種、歴代の『大島椿』のパッケージ等が飾られていました。過去のガラスびんのデザインを見ても大きな変更は無く、変わらずブランド価値を守り伝えて来られたのだと思います。そして、長年にわたり愛される商品として育まれたのだと、改めてロングセラーの商品力を感じました。

2. 製造ライン見学

 大島椿ブランドについて貴重なお話を伺った後は、実際に商品になるまでの製造ラインを見学させていただきました。

<製造工程>
 製造工程では、機械だけではなく目視による検査も多く、品質に不備が無いよう万全の体制を整えていることが伺えます。また、更衣室より作業着に着替え移動する際もエアシャワーで衣服についた微細な塵や埃を徹底的に除去しクリーンルームに入ります。ここにも高い品質を維持する為の配慮を感じました。

【製造⇒ろ過】

 見学ルートを歩き出すと、表面が鏡のように磨かれた大小さまざまなタンクが目に入ってきました。こちらでは、素材を調合する大きなタンクや、クリーム類を作る為の、水分と油分を混ぜ合わせて作る乳化機などがありました。『ツバキ石けん』は、椿油、水、苛性カリを鹸化釜(けんかがま)で混合、加熱して作られています。写真に写っている2つの調合槽は内容物が3トンも入るもので、調合槽Aが、香料なし。調合槽Bが、香料ありとなっており、香料の使い分けによって槽を分けているそうです。

【充填】

 充填工程に移動すると、ガラスびんが見えてきました!ベルトコンベアを移動するガラスびんの中をエアー洗浄してから、6本ずつ充填していきます。その後、しっかりとキャッピングします。今回充填していた商品は、40mlの『大島椿』で、1分間に約40本生産できるそうです。その後、最終検品をおこない、作業者の方がびんの底を目視して、ロットの印字や中味の確認をおこないます。

【包装】

 オイルが入ってキラキラと輝くガラスびんが続々と包装エリアに流れてきます。包装作業ですが、ベルトコンベアに乗って流れてくる『大島椿』をカートニングマシーンが次々と化粧箱へ詰めていきます。その後、商品に応じて、アピール用のポップシール等を張り付けていきます。

【梱包】

 最後に梱包作業ですが、まず6本入/1箱になるよう箱詰めし、更に大きなダンボールに12箱分詰めていき2重梱包します。なぜ梱包を2重にしているかを質問したところ、梱包材が緩衝材の役割も果たすので、2重にすることで輸送時の破損を避けることが出来るそうです。ひとつひとつの商品を、最良の状態でお客様にお届けしたい想いがあるからこそ、梱包方法にも真摯な商品作りへの想いを感じます。

 見学が終わり席に戻ると、なんと、お土産までご用意いただいておりました!中には様々な大島椿商品と共に、どら焼きが!?入っておりました!このどら焼きは、伊豆大島で数量限定販売の貴重なもので、生地の中には、椿油が練り込まれているそうです。この椿油入りのどら焼きは、しっとりした口当たりの優しい味で、とても美味しいものでした。

3. 伊豆大島・株式会社大島椿製油所見学

 八王子工場を後にし、次は伊豆大島を目指します。東京竹芝桟橋から出航している高速ジェット船にゆられて約2時間の船旅です。

伊豆大島に到着し、早速、株式会社大島椿製油所を見学させていただきました。

 1927年に設立された大島椿製油所は、変わらずこの地で営業されてきました。4年前からは、搾油機を新調し、椿の種を、伊豆大島の近隣の皆さんから毎年10月から11月にかけて買い付けています。今年は椿の種がよく採れた年で、その年によって採れ幅に差があるそうで、「今年はたくさん搾油できそうです。」と、株式会社大島椿精油所の河津店長様が笑顔で話してくれました。椿油を搾った後の搾りカスは、畑の肥料などに使われるなど、全て無駄なく使い切るのだそうです。

▲今年採れた大島椿の種が入った袋

 次に伊豆大島の椿についてもお話していただきました。現在、伊豆大島全体で藪椿が300万本ぐらいあると言われています。実際に椿油として使われるのは、全体の1%程しかないので、手入れをすれば、まだまだ採取できるようです。

4. 見学を終えて

 品質に対する徹底した管理と環境を整え、“より良い商品を作り、お客様にお届けする”真摯な姿が、信頼される大島椿ブランドを築いてきたのだと思います。
 また、伊豆大島の手付かずのそのままの自然の姿や、夕暮れの輝く海の景色など、伊豆大島と共に育まれた『大島椿』が、原点にあるからこそ魅力ある商品になっているのだと感じました。私たちも、これらの姿勢を共有し、今後も品質の高い魅力あるガラスびんを供給していきたいと思います。

5. 質疑応答

Q. ベストコスメにて殿堂入りされ、今回ガラスびんアワード協会特別賞を贈呈させていただきました。国内で一番売れているヘアオイルではありますが、ブランドを確立されるまでのご苦労はいかがだったでしょうか。また、工夫された点などございましたらお聞かせください。

 対外的に特別何かプロモーションを仕掛けたというよりも、椿油の良さを継続して伝えています。また、昔から続くブランドイメージを敢えて変えなかったことが親から子、子から孫といった縦のクチコミに繋がっていきました。そこにインターネットの時代が到来し、若い方を中心とした同世代間の横のクチコミが広がっていきました。学生から90代以上の方まで幅広い層にご愛用いただいており、ベストコスメ受賞に繋がったのではと考えています。

Q. 2017年に創業90周年の機に「伊豆大島つばき座プロジェクト」発足されました。大島の土地の回生をはじめとした活動をされているレポートを拝見しました。原点回帰での伊豆大島に向けた思い、また今後における伊豆大島が椿オイルから受ける恩恵(メリット)はどのような点であるとお考えでしょうか。

 1950年頃、大島椿では伊豆大島のアンコさん(島内での女性の呼び方)たちと共にオリジナルのボンネットバスで全国キャラバンを行いました。また、創業の地であり今も唯一の直営店として営業している大島椿製油所では、当時は観光案内所の役割も担っており、伊豆大島を訪問した観光客向けの観光案内や、アンコの手踊りを披露していました。当時を知る島の方の中には大島椿の創業者ほど伊豆大島を宣伝した人はいないという声もいただいております。伊豆大島つばき座プロジェクトでは、ただ椿油を販売するのではなく、椿油専門メーカーとして自然と共存する伊豆大島の文化を発信し、その生活から生まれた椿と椿油のチカラを広めていきたいと考え、現在も社員が毎月地元の高校生とつばき座予定地の整備を行っています。伊豆大島の活性化を自然や生活と共に発信していくことが大島椿グループの原点である大島への貢献となり、椿油の価値向上にも繋がると考えています。
<伊豆大島つばき座プロジェクトURL:https://www.tsubakiza.jp

Q. ロングセラーの椿オイルですが、若い世代の使用量も増え幅広い世代に支持されておりますが、商品アピールの工夫やご苦労がありましたらお聞かせください。

 1回の使用量を間違えて髪につけすぎてしまい、ベタベタになってしまったという声が若い世代には特に多く見られます。使用する適量やタイミングなど使い方の情報は常に発信しています。

Q. 貴社の海外戦略、輸出専用商品の開発などがございましたらお聞かせください。

 まずは日本の伝統的なオイル「椿油」を知ってもらうこと、アウトバスヘアケアの啓蒙を行い、販路を広げています。海外では毎日シャンプーをしないなど、入浴・洗髪の文化が国ごとに異なるからです。また、日本に比べECが普及しているなど流通面でも文化の違いがありますので、訴求の仕方にも注意しています。

Q. その年毎の気象状況により、採取する椿の種の品質に差が出てしまうと思います。貴社が常に品質を安定的に製造する為、注意されている点などございましたら、お聞かせください。

 まず、原料を厳選しています。搾油の段階で質の悪い種は除いています。また、原料として使用する椿油は独自の精製技術によって精製し、年間を通して安定した品質を保てるように努めています。

Q. 日本ガラスびん協会では「びんむすめ」という企画を進めており、その中で生産者がつくる中味について新しい食べ方、飲み方提案をおこなっております。(海苔佃煮をクラッカーに乗せて食べる、甘酒をヨーグルトとミックスして飲用するなど)食品とは異なると思いますが、個人的にお勧めいただけるオイルの使い方がありましたらご紹介ください。

 シャンプー前の頭皮ケア、メイク落とし
汚れを無理なく浮かせ、洗い流し、お肌の水分の蒸発を抑えてしっとりします。
椿油は人の皮脂にも含まれるオレイン酸トリグリセリドを多く含むため、肌に自然に馴染みます。頭皮やお肌のケアにもおすすめです。
ある髪のパーツモデルさんはコンディショナーに『大島椿』を一滴混ぜてご利用くださっています。

Q. 今回ガラスびんアワードの会場内に試用スペースを設けました。男性の試用も見受けられました。最近では男性化粧品も注目されています。おススメの使用方法などもありましたら、お聞かせください。

 『大島椿』は無香料のため、男性にも使いやすいオイルです。最近は男性もカラーやパーマをされる方が多く、髪が傷んで乾燥する方も多いそうです。髪とお肌の両方の乾燥ダメージ対策として、また頭皮ケアも良いかもしれません。実は男性の役者さん、タレントさんにもご愛用者が多くいらっしゃいます。

Q. 椿油は肌への低刺激性、防腐剤・安定剤の不使用など、安全性・安定性の確保に努められ、品質に気をつけていらっしゃいます。中身の保存性による「安全性・安心感」は、ガラスびんの特長となっています。また、昨今では高まる環境問題によって、「容器とは」という事を問い直されているように考えます。ガラスびんに求めるご要望や期待がありましたら、お聞かせください。

 ガラスびん製品の更なる向上を期待しています。

Q. 昨今、化粧品業界はガラスびんから樹脂容器に変えていく中で主力商品『大島椿』は、一貫してガラスびんのご使用を続けていただいています。「自社商品に対しての想い」「容器をガラスびんで続けていくこだわり」などをお聞かせください。

 ガラスびんには重量感、厚み、輝きからくる高級感があります。大島椿の愛用者の中には、このびんの雰囲気も好きという声もいただいています。

▲株式会社大島椿本舗にて

このたびは広報取材にご協力いただき、ありがとうございました。