2014年12月19日

広報委員会研修会レポート キユーピー株式会社様 工場見学

 9月中旬、この時期としては清々しい日に、愛知県豊田市にある、キユーピー株式会社挙母(ころも)工場を訪問させていただきました。
 挙母工場は、全国8工場ある中で、唯一、ガラスびん入のマヨネーズを生産している工場です。ガラスびん入りマヨネーズは「ガラスびんアワード2013」におきまして、日本ガラスびん協会特別賞を受賞されました。広報委員会では、長年に渡るガラスびんへのご愛顧と感謝を込め広報取材の一環として訪問し、日頃なかなか見ることのできないガラスびんマヨネーズラインを始め一連の製造ラインを見学させていただきました。

<ご対応者>

  • 工場長 上田敏哉 様
  • 次長 柳田謙二 様
  • 業務課長 山口真 様
  • 本社原資材調達部 田口仁 様

 

1.マヨネーズとキユーピーの歴史

 スライドとビデオでマヨネーズの歴史とキユーピー社のあゆみを紹介いただきました。

①マヨネーズの歴史

 18世紀半ば、イギリスとフランスが植民地を巡って戦争をしていた頃、フランス軍を率いていたリシュリュー公爵が、スペイン、メルノカ島の港町マオンにて、肉に添えられたソースのおいしさに魅せられてパリに帰国後、「マオンのソース」として紹介したのが始まりと言われています。「マオンネーズ」と呼ばれ「マヨネーズ」になったと言う説が有力だそうです。その後、アメリカに入り、1900年頃に製品として、販売されるようになりました。

②日本初のマヨネーズ

 キユーピーの創始者である中島董一郎氏が、留学先のアメリカにてマヨネーズと初めて出会い、そのおいしさと、高い栄養価に魅せられ、日本人の体格向上を願い広めようと思ったのがきっかけだそうです。
 関東大震災の復興をきっかけに、1925年3月についに発売。当初、見慣れないマヨネーズは、整髪料と間違えられて使用される事もあったとか。
 今では、私たちの生活に欠かせない調味料となっています。

③挙母工場の歴史

 挙母工場はキユーピーの三番目の工場として昭和34年(1959年)に設立されました。なぜ、この地を選んだかというと、創始者の中島董一郎氏の夢である「日本一の桃の缶詰作り」に大きく関係しています。そもそも、キユーピーは「食品工業株式会社」として創立。フルーツの缶詰製造や食品の販売を行っていたのです。
 愛知県は桃の産地であり、また、良質な三河の鶏は、マヨネーズ作りに欠かせない卵を育んでくれる。まさに、この地は中島董一郎氏の夢を実現する地でもあったのですね。
 ちなみに、挙母工場の名前の由来は、この地がかつて豊田市ではなく、挙母市でありましたが昭和34年に豊田市と名称が変わりました。その為、挙母工場の歴史と、豊田市の歴史は同じ55年ということになります。

2.びん入りマヨネーズの製造ライン

 創始者の熱い想いとキユーピー社の歴史を学んだ後は、いよいよびん入りマヨネーズの生産ラインの見学です。なんでも、こちらのラインは50年以上使用しているとの事。工場創立頃より大事に使われているのですね。
「大事に綺麗に使うことが長持ちの秘訣(工場長談)」とか。

①ガラスびんを取り出す

 ガラスびんはその容量(500gや300g)に合わせてそれぞれカートンに入って納品されます。カートンの中は、天地逆の逆さ入れ。逆さに入れることで、びんへの異物混入防止対策をしていることになります。カートンは、最終製品を入れるカートンとして再利用。
係の人の手で、びんは丁寧に箱から出され、この時、口部天面(口天)に傷など無いか確認されます。

②エアークリーン洗浄

 機械でエアーを吹き込むと同時にバキュームで吸い出す方法でびんを綺麗にします。

③外観検査

 係りの人が目視により丁寧にガラスびんを検査します。

外観検査:一本一本外観を検査。この日は印刷されたびん。

④充填

 ここで一本だったラインが4ラインに別れます。4つのノズルで充填。一分間に30本程度。繁忙期には50本程にスピードUPし充填します。

充填:次々マヨネーズが充填されていきます。

充填:マヨネーズに“ツン!”と角が!充填直後ならではの光景!

⑤アルミシート

 密閉性を高めるため熱をかけてアルミシートとガラスびんを密着させます。

⑥キャッピング

 スクリューキャップを巻締めます。

キャッピング:美味しさをびんに閉じ込めます。

⑦キャップシール

 いたずら防止のために透明のキャップシールを装着させます。

⑧ラベル

 紙ラベルの商品はここで糊つけします。期間限定商品など、デザインびんの場合は製びん工場で印刷したびんが納品されるため、この機械はお休みします。

⑨箱詰め

 ①で取り出したカートンに商品を箱詰め。出荷を待ちます。

3.マヨネーズの製造

 厳選された材料で作られるキユーピーマヨネーズ。ここからはマヨネーズ製造ラインの見学です。製造ラインは衛生管理区域の為、入室ができないことから、一般の見学ルートより説明を受けました。室内は25度以下に保たれ、クリーンな環境のもとで製造されています。

①卵

 挙母工場では、指定農場の愛知県産の他、九州の卵も使用しています。卵の鮮度はもちろん、鶏の餌にもこだわっています。卵は、赤玉や白玉などがありました。殻の色の違いは、鶏の種類が異なるだけで、栄養や成分にはまったく違いが無いとのことでした。これらの卵は工場内でしっかり洗浄され次の工程へ。

②割卵

 割卵機(かつらんき)で一分間に600個の卵を割ります。プロのコックさんでも、一分間に40個ほどしか割れないので、とても高速なマシーンです。この機械が三台稼働していました。割卵機は2時間毎に徹底的に清掃が行われます。
割った卵はマヨネーズに使う黄身と白身に分けます。キユーピーマヨネーズは黄身のみを使用しているために、コクのある深い味わいなのです。
割卵機には係りの方がついており、目視で希に起こる上手く割れなかった卵等を排出しています。このラインに立つためには、3ヶ月に及ぶ研修を行うとのこと。確かにすごいスピードなので、私たちの目では到底追いつきませんでした。そんなマシーンの間には、キユーピーちゃんの人形があり、キユーピーちゃんも一緒にラインを見ているようで、とても暖かい雰囲気を感じました。

割卵機のラインにいるキユーピーちゃん!テーマパークのようです。

③殺菌

 黄身はその後、ろ過機で殻、カラザなどの部分を取り除き、加熱殺菌します。ここがポイント!卵は加熱すると直ぐに火が通ってしまいますが、長年のノウハウにより凝固せずに熱殺菌をしているのです。殺菌済み卵黄は貯蔵タンクに送られます。

④調合

 殺菌された卵黄の他にお酢や香辛料などを調合します。この調合物はスラリーとよばれます。スラリーがマヨネーズの味の決め手になるのです。
キユーピーではグループ会社で製造された、りんご果汁やモルト等を原料としたマヨネーズに適したお酢や、香辛料もマヨネーズに適したものを使っています。

⑤乳化

 スラリーはミキサータンクに運ばれ、マヨネーズ用に特に精製された植物油と真空状態でミキシング。舌触りをなめらかにさせるために2~4/1000mmという細かい粒子にしています。これは到底手作りでは作れないきめ細やかさ!キユーピーマヨネーズのおいしさを左右する重要な工程なのです。

4.卵の白身や殻の行方

 卵の殻はこれまでは、土壌改良剤として使われることが多かったそうです。しかし、現在はそれ以外に様々な商品に展開されています。卵は余すところなく、すべて使用されていました。

①卵白

 お菓子にはもちろん、かまぼこ等の加工食品になっています。

②卵殻膜

 特殊な加工で膜だけ取り除くことができるそう。化粧品の原料やパーマネント剤、健康食品の原料として使われています。

③卵の殻を取った卵殻粉

 カルシウム補給食品として、育児食や介護食などの食品になります。

③卵殻粉

 土壌改良剤はもちろん、チョークになったり、滑り止めとしてタイヤや靴のゴム底にも使われています。

5.質疑応答

 工場見学後、疑問点などをディスカッションさせていただきました。

Q1:マヨネーズは長期保存がききますがなぜですか?

A1:美味しさを保つためにも脱酸素が重要です。昔はガラスびん商品の賞味期限は7ヶ月でしたが、今では未開封であれば12ヶ月です。樹脂ボトルタイプで10ヶ月です。マヨネーズの成分であるお酢には高い殺菌効果があります。そのため、サルモネラなどの菌を加えても24時間以内に死滅してしまうのです。しかし、開封後は1ヶ月ほどで使い切るのが望ましいです。

Q2:様々なマヨネーズの種類がありますが、ガラスびん入りでマヨネーズのフレーバー展開はありますか?

A2:今のところ普通のマヨネーズタイプのみです。しかし、ガラスびん入りマヨネーズは、限定デザインの商品が根強い支持を頂いています。これからも、お客様に喜ばれるデザインのびんを製造したいと考えています。

Q3:マヨネーズの美味しいと思われる期間はありますか?

A3:マヨネーズは中味が落ち着く製造から半月経った頃からが美味しく感じられます。丸くなる感じです。

Q4:今後ガラスびん入り商品の開発はありますか?

A4:開発は常に外観の差別化を狙っています。ガラスびんでしか出せない商品は今後も考えられます。

Q5:御社がガラスびんを採用されている点で利点と感じるところはどんなところですか?

A5:ガラスびんは高速ラインに対応できます。スピードが違います。また、重厚感があります。リサイクル面でも優れています。形状にコンセプトを持たせやすい点が利点として挙げられると思います。

Q6:見学ルートに様々なQCサークルのメンバー写真が有りました。盛んなサークルの決めては何ですか?また、どのようにサークル活動を行っていますか?

A6:サークル活動は長期のものから短期のものまで様々です。活動内容によって参加メンバーもそれぞれです。メンバーで知恵を絞り合っています。また、年に一度、全工場の発表会で賞を取ることも目標に頑張っています。

Q7:その他、工場で活動していることは何ですか?

A7:8月31日は「ヤサイの日」です。その日は製販メンバーが一体となりにスーパー等の店頭で商品のアピールを行います。

6.見学を通して

 2時間半以上に渡り見学とディスカッションをさせていただきました。商品への徹底したこだわりと、クリーンな環境を感じました。また、キユーピーちゃんのキャラクターが壁や廊下などいたるところに見られ、心を和ませてくれたり、ラインでは手書きのポップや人の手でしかできない作業や清掃が行われており、暖かさを感じました。
「愛のある食卓」作りには、工場から愛情を注がなければできない事が多くあるのですね。また、印刷びんやデザイン再現性の高さ、気密性などガラスびんの良さを知り尽くした商品作りには、改めて「ガラスびんは良い容器だな」と感じさせられました。工場見学を通して、ガラスびんが豊かな食卓作りのお手伝いをしていることを再認識いたしました。日本ガラスびん協会では、これからもガラスびんの良さを多くの皆様に伝えて行きます。

貴重な体験をさせていただきありがとうございました。