2011年08月18日

海外情報(2011年8月)

Glass International誌は3月と5月号で"Focus on China"と"Focus on Russia"を
特集記事として掲載した。以下にその要約を掲載する
(訳者注:本稿の執筆者は、Seema Gahlaut氏。Indiaと注記されている以外、キャリア等は分からない。統計のソースも書かれていない。この雑誌の発行場所は英国、社歴は永い。両国の業界については、殆ど情報がないので取り上げた。)

1.Focus on China(中国のガラスびん業界)-急成長の道程
  

(1) 業界の概況
 中国のガラスびん需要は、経済の成長率を上回る成長を成しつつあり、欧州のみでなく、低コスト供給源と考えられている近隣国でも脅威に感じている。
 Emhart Glassの経営者の一人は次のように述べている。「世界のガラスびん需要は、年率3.3%の成長を成している。アジア、特に中国の寄与が大きく、その成長率は2桁に近く、これに及ぶ地域はない。」
 個人所得は、過去5年間で都市で64%、地方で58%増加した。所得水準の向上した消費者は、高品質の商品・味覚・外観に関心を持つようになった。
 今まで主流であったパッケージしない商品から、パッケージされた商品を求めるようになった。西欧のライフスタイル、世界的に良く知られたブランドへの感心が高まった。
 このような環境の中で、ガラスびん需要は増加している。業界も設備の拡大、レベルアップの努力を続けている。しかし、業界企業は、世界の先進国企業の経営に比してギャップがある。政府の補助金に依存し、中間経営層が不足していると指摘されている。業界には小企業が多く、賃金・エネルギーコスト等の上昇に苦慮して、企業の統合が多く見られる。(このような説明の後に次表が掲載されている。年次は表示されていない。)



中国・パッケージング産業の内訳(Breakdown of the packaging industry in China)

素材別(Material) 本数(Units):億本
ガラスびん(Glass bottles) 629
紙器(Liquid cartons) 236
プラスチック(Plastics) 668
金属缶(Metals) 468
(Paper-based containers) 716
(Flexible Packaging) 4,224
その他(Others) 38

(訳者注:因みに日本ガラスびん協会正会員6社の2010年出荷数は67億本)

(2) ガラスびん主要需要先業界について
 特にビール業界の巨大さについて説明されているが、年次等の表示が把握しがたいので、ここでは「キリン食生活研究所」ホームページ掲載の統計を引用させて頂いた。


国別ビール消費量(2009年)10位まで

順位 国名 消費量(万kl) 前年比
1 中国 4,219 +7.8
2 アメリカ 2,451 -2.0
3 ブラジル 1,049 +4.9
4 ロシア 1,001 -8.3
5 ドイツ 899 -1.4
6 メキシコ 641 -0.4
7 日本 598 -2.1
8 イギリス 468 -9.1
9 スペイン 332 -3.0
10 ポーランド 325 -9.5
世界計 推定 12,727 +0.1

注)消費量: 万kl以下4捨5入

 人口が13.4億人(WHO 2010年による)の市場で、ビール消費量が断然大きいのがよく判る。ビール以外でも、ソフトドリンク・リカーなど、伸張が期待される。



(3)主要ガラスびん企業について
 12社について説明されているが、始めの4社は、外資・グローバル企業の傘下にある。以下に4社について掲載順に、説明を要約した。

① Taiwan Glass
 台湾製びん業界の代表的企業。現在、台湾に4工場・中国に6工場を稼動している。最近、欧米から新技術を導入し、設備のレベルアップを行っている。

② Owens-Illinois(O-I)
 2010年、四川省・広東省企業に続き、12月には、Hebei Rixin Glass Group Coからガラスびん製造部門を買収する契約をした。これにより、北京・天津地区への拠点を得たことになる。製造能力は併せて100万トンに達する。主として急成長しているビールびん市場をターゲットにしている。

③ Saint-Hua Glass Container Company
 Saint-Gobainが70%株式を持つ子会社。Saint-Gobainが中国市場に参入以来、工場建設までに14年を要した。工場は広東省湛江市に所在する。

④ Sichuan Malaya Glass(四川マラヤガラス)
 Sichuan Tuopai Yeast Liquor Coと、Malaya Glassのジョイントベンチャーとして、2001年設立。Malaya Glassは、東南アジアの大企業Fraser & Neaveの100%子会社。年産能力34万トン。多色多品種のガラスびんを製造・販売しているが、狙いはグローバルなビール会社など。
 なお、Malaya Glassの株式は、2010年5月、Fraser & Neaveから、Berli Jucker社(タイ国を代表する企業の一つ)へ売られた。また、この買収に際し、Berli Jucker社とO-I社が合弁会社を設立したとのニュースがあった。(Fevenews May 2010に
基づき、海外情報2010-7月に掲載)

⑤ その他の企業
 8社について社名を上げ、説明がなされている。その他に重要企業として14社の社名が列記されている。主得意先業界に薬品を上げている社が多い。

(訳者注:広い地域・大きい人口・成長している経済・上昇している消費水準・増加するガラスびん需要。その中で、ガラスびん業界には多く企業が混在し、揺れている印象を受けた。)


2.Focus on Russia(ロシアのガラスびん業界)-揺らぎの中の成長


(1)ガラスびん業界 経過と現状
 ロシアは、第2次世界大戦後、冷戦の時代を経て、ゴルバチョフ政権時代、ペレストロイカ政策、冷戦終結、ソビエト連邦解体、ロシア共和国となる。エリツィン政権となるが、1998年国家財政危機・国内混乱に陥る。代わってプーチン時代となり、豊富な天然資源、その価格高などに恵まれ、諸問題を抱えながらも経済は成長を続けてきた。しかし、リーマンショックの影響は免れ得なかったが、政府と中央銀行(The Central Bank of Russia)による対応策で、成長ペースを取り戻しつつある。
 このような背景の中で、ガラスびん業界も揺れた。しかし、リーマンショック後の回復は早く、2009年の業界生産量は、前年比6%増の150億本近くに達し、成長ペースを取り戻している。背景に経済成長に伴う消費者の所得上昇・ハイパーマーケットなど流通の変化・他素材容器からガラスびんへの切り替え・回収びん使用減などがある。
 ガラスびんの主要需要先は、飲料と加工食品である。この国の消費者は、アルコール飲料を好む。アルコール飲料の一人当たり消費量(%換算)は、WHOの勧告上限の2倍を超えている。ウォッカの消費は国民飲料としての人気は衰えていないが、ビールの消費は15年間で3倍以上に達し、世界第4位である。<上記「国別ビール消費量(2009年)10位まで」>を参照。
 炭酸飲料、PepsiとCoca-Colaのイメージは、両国の政治的関係によって左右されるが、両社共にロシア市場を重視し、巨額の投資を計画している。


(2)ガラスびんの輸出入
 ロシアは輸入国であったが、ガラスびんの国内生産の拡充に伴い、現在は国内需要の7~9%まで減少した。輸入のガラスびんは、高品質を要求される加工食品・高品質のアルコール飲料用などである。
 ガラスびん業界における、設備投資・品質向上の結果、輸出は伸びる傾向にある。輸出先は現状では、旧ソビエト連邦構成国、ウクライナ・カザフスタン・アゼルバイジャンなどが主である。

(3) 主要企業
 主要企業についての説明と、別に表が掲載されている。ここでは表を掲載し、説明は「備考欄」に記載した。

ロシアの主要ガラスびん製造企業

社名 工場数 製造能力 備考
Sisecam
(ロシア名Ruscam)
5 1,150千トン/年 トルコ本拠。Rascam社を
買収してロシア市場に参入。
更に2工場買収、本年中に
1工場新稼動予定。
現在の推定シェア16%、
1/3を目指す。
Rus Glass 3 800千トン/年 2004年に2社が合同して設立。
3番目のオムスク(ベラルーシの
首都)工場は、現在1窯。
2011年末に2号窯始動予定。
現在の推定シェア12~13%。
Owens-Illinois 1 220百万本/年
Saint-Gobain 1 600トン/日
Schott 1 公表せず
Veda Pack 1 580百万本/年 現在2窯。3号窯建設(能力倍増)
計画中
Aktis 1 360百万本/年
Rasko 1 850百万本/年 3窯、7ライン稼動。
シベリアに1工場建設を考えている。

 

注1. 社名順は原表の通り。Rasko社は、表には掲載されていなかったが、主要企業の説明欄に掲載されていたので追加した。
注2. Owens-Illinois、Saint-Gobain、Schott、3社については説明欄には記載なし。
注3. Schottは、ニューガラス専門のグローバル企業で、ガラスびんは製造していない。   

(4) 見通し
 ソビエト連邦時代は、ガラスびん製造業は遅れていた。数量・品質両面で国内需要を充たしえず、空びん回収や輸入に依存していた。
 しかし、最近は新設備・新技術を備えた新工場が建設され、また計画されている。近い将来、国内需要を充たすと見込まれるが、企業が生き残るためにはカスタマーサービスの能力を持つことが条件となろう。