2012年09月18日

海外情報(2012年9月分)

特集・Focus on Latin America
 海外情報2011年8月分では“Glass International誌”の記事から、“Focus on China”“Focus on Russia”を掲載した。今回は同誌2012 March, April号から“Focus on Latin America”を抄訳した。Latin Americaはメキシコ以南の中南米をさす。
(筆者は前回と同じSeema Gahlaut氏:Indiaと付記されている他、経歴等は不明である)

(1) 概況について

 この地域は、アジア太平洋地域に次ぐ、ガラスびん需要の伸張率の高い地域である。過去10年の平均成長率は3.6%。アジア太平洋地域の6.3%には及ばないが、欧州・北米の0.7%を大きく上回る。中でもブラジルがリーダーで、最も注目の市場となっている。メキシコ、アルゼンチンが続いている。
 メキシコは米国に隣接する特殊条件があり、米国と“Free trade agreement”を結び輸出入を含め深い経済関係をもっている。ガラスびん業界もその中に含まれている。
 ブラジル・アルゼンチンは、パラグアイ・ウルグアイを含め、南米南部共同市場(メルコスル)を形成している。最近ベネズエラの加入が決定し、EU・米国・中国・日本に次ぐ5番目の経済圏になるとの情報(朝日新聞 8月6日付)があった。
 <注:インターネットからIMF公表の2011年国別GNP 資料を見た。ブラジル:年間GNP2,309・7位、メキシコ:1,659・11位、アルゼンチン:642・22位。単位10億ドル。参考までに日本は、4,935・4位。また、人口(WHO資料)はブラジル195、メキシコ113、アルゼンチン40、参考:日本126。単位百万人>

 この地域でも容器素材間の競争が厳しい。しかし、最近では、製びん技術の進歩で軽量化が進み、消費者が衛生・透明さ・環境などの観点からガラスを見直す傾向もあり、他素材からガラスへ回帰する傾向も見られる。
 ビールびんは、最大の市場である。その需要はこの10年間増え続けてきた。主として、リターナブルびんが使用され、かつては茶色・形状も限られていたが、最近は色彩・形状ともに多様となっている。
 メキシコのみ、容器素材別シェアが掲載されていたので、最後に添付した。
(Source: Glass International, March & April 2012)

(2) 主要製びん会社

1.Vitro社
 メキシコに本拠を置くグローバルガラス企業である。ガラスびんの他、板ガラス・ガラス繊維・珪酸ガラス・ガラスウェアを事業分野とし、70カ国に輸出している。
 ガラスびん市場推定シェアは、メキシコで74%、米国で3%。工場数はメキシコ8、中米3、ボリビア1。リサイクルにも注力し、2010年181千トン回収(前年比+19%)。
 会社には苦い歴史がある。1989年、当時米国2番目の製びん会社・Anchor Glassを9億ドル以上で買収したが、間もなくソフトドリンク市場にPETが侵入し、市況が一変。1995年までに22工場から14工場に、生産量を20%カットした。しかし赤字が止まらず、1997年にOwens Brockway Containers of Canadaへ393百万ドルで売却した。
2.O-I社
 当社は、この市場への進出に最も力を入れている企業である。Stroucken会長は「成長市場に投資するのが当社の政策である。」と述べている。
 特に、2010年には新たにブラジルで3工場、アルゼンチン1工場を買収し、併せて地域の工場数は13に達した。アルゼンチンはこれが初進出である。工場稼動国は、他にコロンビア・エクアドル・ペルーがある。またチリ・メキシコを調査している。
 特にブラジルを重視しており、地域統括のオフィス、研究開発事務所を置いている。
 2010年の地域の売上高は10億ドル、利益率も高い。
 痛恨は、2010年、ベネズエラで長期に稼動していた2工場が、チャベス大統領によって国有化されたことである。(海外情報2010年11月分既報
3.Verallia社(Saint-Gobainグループ)
 当社は、この地域で6工場(ブラジル3・アルゼンチン・チリ・ペルー各1)を稼動している。
 需要増大に対応するため、60百万ドルで1窯建設中で、2012年に稼動する。(工場名の記載は無い)この結果、年間の生産能力は4億本から6.8億本に大きく増加する。
 なお、当社は世界2番目の製びん会社で、14カ国に工場・46カ国に営業所・6開発研究所を展開している。2010年の売上高は36億ユーロであった。
(Source: Glass International, March & April 2012)

【参考資料】 メキシコ Packaging素材別 構成比 (単位:%)

素材別 メキシコ 参考:欧州
ガラス(Glass) 13 32
プラスチックボトル(PET含む) 23 37
金属缶(Metal) 11 17
紙器(Liquid cartons) 6 7
(Paper- based containers) 5 2
(Flexible Packaging) 42 5
100 100

Source: Glass International, March

 参考は、Feveよりの資料(海外情報2011年7月分掲載
 素材別は同じ分け方である。
 最後の(Flexible Packaging)は、袋などを含むのか内容は不明である。
 メキシコは米国の影響が大きく、興味があるので掲載した。
 両方共にGlassがMetalより大きいことに注目した。
 日本では、ビール・清涼飲料にはあるが、全市場を含む統計はない。