-「ガラスびんアワード」の審査委員長を務められて
3年目になりますが、振り返ってみていかがでしょうか?
【リリー・フランキーさん】
この3年間、一年ごとにすごく変わって、進化しているというか。本当に薄く、軽く、そして強くなっていることが実感できます。3年間ですが、その様子を見てきている中で、進化し続けている業界だ、ということがわかってきました。
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-どんどん進化している、時代を反映している、
と総評でもおっしゃっていましたが?
【リリー・フランキーさん】
展示してある作品(受賞作品)を見ていると、昔ながらの商品なのに、持つとびっくりしますよ。軽かったり、薄かったりして。また点字が入っていたりと・・・
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-いろんなところが、少しずつ進化しているんですね。
【丸橋吉次会長】
ガラスびんを理解していただくと、判っていただける進化がありますね。また、ガラスびんを使い込んでいただくと、より、その良さがお判りいただけると思います。
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-リリーさんが感じる、ガラスびんの良さとは何でしょうか?
【リリー・フランキーさん】
おいしいですし、見た目も綺麗ですし、綺麗なガラスびんに入っているものを選びたいですね。
【丸橋吉次会長】
うれしいですね。
-ガラスびんの持つ存在感、安心感、安定感
に関してはいかがでしょうか?
【リリー・フランキーさん】
これまでの信頼感は変わらないですし、今後、その信頼は益々高くなっていくと思います。先ほど、ガラスびんの需要は年々下がっているというお話がありましたが(合同祝賀会開会の会長挨拶)、ガラスびんがどんどん進化しているんだよ、ということを消費者にアピールできれば、これからの需要は逆に増えていくのではないでしょうか?
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-それでは、話は変わりまして、ガラスびんはどんどん軽くなっていっている、というお話がありました。
中には、従来の半分の重さのガラスびんもあるそうですね。
【丸橋吉次会長】
(ガラスびんを手に持って)これがそのガラスびんなんですよ。
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-こちらが従来のガラスびんです。
【リリー・フランキーさん】
(手に取りながら)あぁ、昔ながらのガラスびん、という感じですね。
【丸橋吉次会長】
そして、こちらが軽量ガラスびんです。
【リリー・フランキーさん】
(軽量ガラスびんを手に取りながら)先ほどもお話したのですが、本当に軽くてびっくりしますよ。記憶の中に知っているものってあるじゃないですか?たとえば、このくらいの重さかな、という記憶。でも、このガラスびんを持つと、腕がこう、浮き上がるくらいの軽さでびっくりします。
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-このくらいの重さ、と思って持ってみたら「アッ、軽い」ということがありますよね。
【リリー・フランキーさん】
昔は割れないように分厚くて、重たいガラスびんになっていたと思うのですが、今は薄くても丈夫なガラスびんになってきているんですね。
-みなさんから向かって左側が従来のガラスびん、右側が新しいガラスびんということで、ちょうど重さが半分くらいになっているのがお判りいただけると思います。
見ていただくと、新しいガラスびんのほうが薄くて小さく見えますよね。
ということは、会長。素朴な質問ですが、容量が違うということは無いのでしょうか?
【丸橋吉次会長】
そのようなことはありませんよ。
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-それでは確かめてみましょう。
まずは従来のガラスびんにミルクを注いでみます。従来のガラスびんいっぱいにミルクを注ぎました。
そして、リリーさん、この新しい小さく見える軽量ガラスびんに同じ量のミルクが入れば、すごいですよね。
【リリー・フランキーさん】
そうですね。
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-(軽量ガラスびんにもミルクを注ぎ終えて、)
入ってしまうんですね。
【リリー・フランキーさん】
厚みが薄くなった分だけ小さく見えた、ということなんですね。
でも、従来のガラスびんと比べると、綺麗ですよね。滑らかさが違う気がします。
【丸橋吉次会長】
ガラスびんの強度を出すためには、まず均一な肉厚が必要なんです。また、ご指摘のあった、表面の滑らかさですが、擦り傷がつくとガラスびんの強度が下がる原因となってしまいますので、表面にコーティングをして擦り傷がつかないようにしています。
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-パッと見たときの光沢も違いますものね。
【丸橋吉次会長】
このガラスびんはリターナブル対応で、再使用することができるのですが、50回以上再使用できるほど丈夫になっているんですよ。
-それだけエコですぐれた機能をもった軽量ガラスびんなのですが、完成までにはかなりのご苦労があったのではないですか?
【丸橋吉次会長】
肉厚を均一にするのに苦労しました。ガラスびんを作る前に試験管のようなものを作る(粗型)のですが、その肉厚がきちんと制御できていないと、肉厚の均一なガラスびんをつくることはできません。
そのために、コンピューターシミュレーションを繰り返して、検討を進めようやく、完成しました。
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-軽量化を始め、安全・安心が、多くのブランドメーカーさんの求めていることだと思うのですが
【丸橋吉次会長】
それは当然のことだと思います。それだけではなく、さらに使い勝手の良さが求められていると思います。
たとえばユニバーサルデザインの考え方を取り入れるなどの工夫をすることで、対応をしております。
-今回、日本ガラスびん協会が創立60周年迎えますが、
どのようなお気持ちですか。
【丸橋吉次会長】
人生で申し上げますと、還暦を迎えるわけですが、これからもさらなる挑戦をしていきます。震災を契機に、安全・安心、安定を求め、身近なものを大切にするという機運が生まれていると思います。不測の際に、必要な物の一つに長期保存が可能なびん詰めに人気が出始めています。
また、少子高齢化の中で、栄養補助食品・介護食品・機能性食品には保存性が抜群のびん詰めが適しており、見直されるものと考えます。
さらに、「重い・割れる」とよく言われますが、昨今のインターネットショッピングや通販の発達により、その重さをあまり意識しなくてもよい時代になってきたのではないでしょうか?
したがって、これからは、ガラスびんの良い部分がクローズアップされる時代がやってくるのではないかと思います。
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-なるほど。話を伺っているだけで、ガラスびんの利便性を実感するのですが、最後にリリーさんからガラスびんの可能性・将来性についてお話いただけますか?
【リリー・フランキーさん】
ガラスびんのものは、昔ながらの見慣れたものが多いですね。でも実際に手に取って見ると、ガラスびんが進化しているんだってことを感じます。そういうことを、たとえばこういう(ガラスびんアワード)活動の中で、その認識を消費者にしていただけると、ガラスびんに対する需要が伸びるのではないかと思います。ガラスびんに入っているものが良いに決まっている、という前提のなか、やむを得ず、他の容器に入った商品を使ったりしていますが、こんなに強くて軽くて、さらにエコロジー的にも優れていると判れば、これからのガラスびんの可能性は大きいですし、楽しみにしています。
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-日々進化していくガラスびん、これからのガラスびんにご期待いただければ、と思います。
それでは最後に、日本ガラスびん協会60周年を記念して記念誌を発行いたしました。会長、記念誌の特徴を教えてください。
【丸橋吉次会長】
普通、記念誌といいますと、協会の歴史を書くものが多いのですが、それでは、本棚の中に埋もれて、なかなか読んでいただけない、ということになりかねません。そこで、今回は「製造専科」という特集記事をメインに持ってきて、ガラスびんの原料から、成形方法、金型の設計等詳しく紹介しています。
いつでも手にとって見ていただけるようなものになっておりますので、ぜひ一度ご覧ください。
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-それではお時間となりましたので、トークセッションは以上とさせていただきます。
会長、リリーさん、ありがとうございました。