2022年06月24日
海外情報(2022年6月分)
1. ドイツガラス産業連盟の水素燃焼プロジェクトが完了
2020年7月海外情報で紹介した、ドイツガラス産業連盟(BV Glas)とエッセン市に拠点を置くガス・熱研究所(GWI)が共同で行っていた水素燃焼(HyGlass)プロジェクトが完了した。同プロジェクトは、蓄熱式溶解炉で天然ガス代替として水素・ガス混合あるいは水素単独使用が長期にわたり使用可能かを探ることを目的としており、結果は非常に前向きなものであったとしている。記事によると、燃焼試験およびシミュレーションの結果から、水素使用が燃焼に与える影響はそれほど大きなものでは無く、炉内温度、熱伝導に大きな変化は見られなかったとしている。また、水素使用でNOxは増加したが、これらは溶解炉側で技術的に対応できる範囲であったとしている。一方で、水素のガラス品質に与える影響、例えば色調に与える影響が課題となったが、これはバッチ調合比の調整で対応可能としている。今後、ガラス産業で水素を長期にわたって使用するには大量のグリーン水素の調達が課題となる。
出所:glassonline.com
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2. オーストラリアのオロラ社 酸素燃焼炉建設
オーストラリアのオロラ社(Orora)は、オーストラリア政府の最新生産構想(モダン・マニュファクチャリング・イニシアチブ:Modern Manufacturing Initiative)から12.5百万オーストラリアドル(約12億円:95円換算)の資金援助を受け、温室効果ガス削減を目的として南オーストラリア州のゴーラー工場(Gawler:アデレードから約60km)に、オーストラリアで初と目される酸素燃焼溶解炉を建設する。オロラグループは、2050年までにスコープ1および2で温暖化ガス排出実質ゼロを目標としている。
出所:glass-international.com
訳者注:オロラグループはオーストラリアでガラスびん、飲料缶、ワインの蓋などを生産、ニュージーランドで段ボール事業などを展開している。
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オロラグループについては以下を参照ください。
3. 英国ガラス協会が脱炭素をテーマとして会議を開催
英国ガラス協会(SGT)が開催する溶解炉の課題解決を目的とするファーネスソリューションという会議が、3年ぶりに6月8日、9日の二日にわたり実際に参加者を受け入れて開催された。今回は会場を、グラスフューチャーズ開発拠点建設現場が見渡せる英国セントヘレンズのトタリー・ウィキッド・スタジアム(Totally Wicked Stadium)に移して開催された。SGT溶解技術委員会のナイジェル・ロングショー(Nigel Longshaw)氏が「実際にお会いして開催できるのを嬉しく思う。今回は脱炭素に焦点を当てての開催となる。」と歓迎の挨拶を行った。初日に登壇したNSGグループピルキントン社のアンディ・キーリー氏(Andy Keeley)は、同社セントヘレンズ工場で昨年実施した世界初の水素100%燃焼について報告し、水素供給についてBOC社のウエイン・ブリッジャ氏(Wayne Bridger)は、水素が工業規模で使用されるには今後10年程度かかると見通しを述べた。
グラススフューチャーズ(GFL)のロブ・イレソン氏(Rob Ireson)は、バイオフュエルの可能性について報告した。GFLはエンサーク社(Encirc)とバイオフュエル試行で成功したが、バイオフュエルの供給、他産業との競合などから入手が課題となっている。二日目にはグラステクノロジーサービス社(Glass Technology Service)、シンプソンコンバッション社(Simpson Combustion)、セルシアン(CelSian)、DSF、エミシールド社(Emisshield)などが登壇した。
出所:glass-international.com
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4. 炭素捕集試行プロジェクト
溶媒吸収型の炭素捕集の世界初の試行が、GFLのセントヘレンズ研究拠点およびセントヘレンズにあるNSGピルキントン社の工場で実排ガスを使って行われる。これは、BEIS(英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省)の英国における次世代CCUS技術開発を加速するための20百万ポンド(約33億円:165円換算)の資金の一部1.7百万ポンド(約2.8億円:165円換算)を使って実施される実行可能性調査(FS:フィ-ジビリティースタディー)。
出所:glass-international.com
訳者注:炭素捕集とその使用(CCUS)は脱炭素を進める上で必須となっているが、現時点のCCUS技術は(1)技術的に未成熟、(2)全ての産業界で使用でき無い、(3)コスト、といった課題を抱えており早期に産業界で使用できるよう技術開発が急がれている。
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5. 食品接触材料の中でガラスびんが最も安全
6月2日 ベルギーのブリュッセルに本部を置く欧州ガラスびん生産者連合(European Federation of glass packaging makers;FEVEと通称する)のファレリ事務総長が、食品接触材料(Food Contact Materials;FCMと略す)に関する最新の研究報告注1からガラスが最も安全な食品接触材料であると述べた。
出所:feve.org
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注1 原報告については以下のURLを参照ください。
FEVEについては以下のURLを参照ください。
6. EU地域でのガラスびん市場回収率は過去最高の78%
FEVEは、EU地域での2019年ガラスびん市場回収率は2018年から2%向上し、過去最高の79%だったと報告した。2030年までに90%回収することを目標としている。
出所:feve.org
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7. メキシコでガラスびん供給が不足
メキシコの飲料、食品、化粧品、薬品などの業界のガラスびん需要増で供給不足が起きている。2022年第一四半期の需要増11%に対して生産増は約7%の53.2億本だった。需要増の内訳は、テキーラ生産が年換算30.8%増、ソース、マヨネーズ、ジャムは約11%、バイヤルは8.9%、ビールが8.9%となっている。テキーラ生産者は、・2年間のコロナ渦後の過剰な需要、・欧州でのガス供給問題他をあげ、これは世界的な問題だとしている。
メキシコガラスびん業界95工場は平均95%稼働となっているとINEGI(Instituto Nacional de Estadistica y Geografia:メキシコ国立統計地理情報院)が報告しており、業界は来年2023年までフル稼働の予定。
出所:glass-international.com
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