2018年03月23日

広報委員会研修会レポート 霧島酒造株式会社様 工場見学

 日本ガラスびん協会 広報委員会では、ガラスびんに関する広報活動と日頃のご愛顧への感謝を込めて、ガラスびんに関連したさまざまな場所を訪問しています。

 今回は秋も一段と深まる11月中旬に宮崎県都城市へ。「第13回ガラスびんアワード2016」で日本ガラスびん協会特別賞を受賞されました霧島酒造株式会社様を取材訪問させていただきました。

日本ガラスびん協会特別賞受賞
「白霧島・黒霧島・赤霧島(900ml)」

ご対応者

  • 代表取締役 社長 江夏順行 様
  • 取締役 西村善彦 様
  • 経営計画室 顧問 黒木尚之 様
  • 生産本部 製造部 課長 益田孝一 様
  • ボトリング本部 ボトリングサポート部 副部長 城村孝幸 様
  • ボトリング本部 ボトリングライン部 主任 富永祐介 様
  • ご対応いただいた社員の皆様

見学内容

  1. 霧島酒造株式会社について
  2. 製造ライン見学
  3. 霧島ファクトリーガーデンにて質疑応答
  4. 見学を終えて

1. 霧島酒造株式会社について

 はじめに、江夏社長より霧島酒造株式会社についてお話しして下さいました。

江夏社長は力強く語られます。
「弊社は農産物加工業であり、フードビジネスであり、まさしく6次産業であります。そして地場産業である。地域創生の立役者とも言われたことがあります。」
 霧島山にめぐまれた非常に良い環境で生産しており、主力製品である「白霧島・黒霧島・赤霧島」は、原料の芋は南九州産100%、米は国産米100%で4分の1は宮崎県産、仕込み水・割り水は霧島裂罅水(れっかすい)を100%使用しています。そして、すべて自社で生産しています。
 本格焼酎市場全体は、約250万石の規模ですが、その内霧島酒造は、約21%の54万石を達成しています。霧島酒造での生産量の99.4%は芋焼酎で、これは芋焼酎市場の115万石に対して、霧島酒造が半分近くを占めていることになります。
 従業員は約560名で、毎年繁忙期(8~12月)には200名近くを臨時雇用されており、地域の雇用創出にも貢献されています。平均年齢は32歳で、若手社員が増えてきているそうです。
 お話の中からも、地元の自然、農産物そして人との関わりを大切にされていることが窺い知ることができました。

また、事前にお送りした質問にもご丁寧にお答えいただきました。

Q. 貴社がこれまで成長してきた1番の要因は何だとお考えでしょうか?

成長してきた理由ですが、特別なことはしていません。“使命感”を持って、着実にやってきた結果だと考えています。
 独自の営業力、原料米や甘藷に対するこだわり、仕込み水・割り水に使用する霧島裂罅水という名水に恵まれて今の霧島酒造があります。主原料となる芋特性の「あまみ」「うまみ」「まるみ」の味わいが支持されているのでしょう。芋焼酎の原料である、お米・甘藷・水は、お客様の口に入る農産加工品として、万全な検査体制を構築しております。原材料一つ一つの安心と安全を担保するためトレースの出来るものでないと使用いたしません。自社生産という点にもこだわりを持っています。

Q. 霧島山など活火山が近くにありますが、この地域での焼酎づくりに苦労された点は、また恩恵を受けられている点はどのようなことでしょうか?

天孫降臨の高千穂の峰を仰ぐ都城(霧島)盆地。この地にあり、霧島酒造が霧島という製品を造りお客様に提供しています。当地は盆地であり、霧がよく発生します。霧の雲海に浮かぶ高千穂の峰が島の如く見えることから霧島とも呼ばれています。また、都城市の由来は、第2代領主北郷義久が初代天皇神武天皇の皇居があった都島の地に築城したことによります。
 南九州の風土が醸し出す本格焼酎ですが、この圏域で作られる甘藷は産地を形成し特産品でもあります。産地と深くかかわり、当地で採れる甘藷で本格焼酎を造る。まさに地場産業と言えるのです。本格焼酎は、同じ原材料を使っても同じ味わいの製品は造れません。その土地々の風土が醸す味わいとなります。このように地域の気候・文化や暮らしの中に深く根付いたものでもあります。当社の本格焼酎の仕込み水や割り水に使用している霧島裂罅水も製品の品質に重要な役割を果たしています。

 ご説明の最後に、江夏社長は以下のように語られました。
「弊社は2016年に創業100周年を迎え、2017年は『101ブランド創生元年』と位置づけています。今、世の中には過剰なくらい商品があふれています。その中で、ブランドを際立たせるためには、消費者の情緒的、感性的価値に訴えかけるための歴史、文化、ストーリーをいかに語っていくかが重要です。この“ストーリー性”と、“需要と供給(サプライ&デマンド)”“サービス”を合わせた3つの“S”を、当社では大事にしています。企業スローガン『品質をときめきに』を不変のスローガンとし、次の100年に向けて邁進していきます。」

2. 製造ライン見学

 貴重なお話を伺ったあとは、いよいよ製造ラインの見学です。
 それでは、本格焼酎ができるまでの製造方法を、順を追って見ていきましょう。

■本格焼酎の製造方法

【米蒸し】

 原料米を洗浄・浸漬・水切り後、一定の水分を含んだ米を連続米蒸機に入れ、約40分かけて外側が硬くて内側がふっくらの状態に仕上げます。蒸し加減は、麹づくりの善し悪しを左右するため、慎重に作業が進められます。蒸しあがった米は放冷機で、麹菌が生育しやすい温度まで冷やされます。

 原料米は、1袋500kgで1日に17トンの量を受け入れています。

【製麹(せいきく)】

「製麹(せいきく)」は、蒸米に種麹を散布し、約2日間かけて生育させる工程で、酒質を左右し、焼酎づくりでもっとも重要とされています。冷風で制御しており、麹菌が悪くならないように40℃以上に上がらないように調整しています。
 霧島酒造の代表的な商品では、本格焼酎「黒霧島」に黒麹、本格焼酎「白霧島」に白麹を使用しています。

【一次仕込み】

「一次仕込み」は、麹と霧島裂罅水を原料とし、これに純粋培養した酵母菌を添加して酵母を大量に培養することと、二次仕込みに必要な酵素や、もろみの腐敗を防ぐクエン酸の溶出を目的としています。厳しい温度管理のもと5日間で、酒の母と書いて「酒母(しゅぼ)」ともいわれる一次もろみができあがります。1つのタンクで約8,000リットルの仕込みを行っています。

【芋の受入れ、選別】

 原料の芋は本格芋焼酎に適した南九州の「黄金千貫(こがねせんがん)」を使用しています。芋の受け入れ時は、サンプルを取り病気や線虫等の悪い芋が入っていないかを調べ、異常がない芋を受け入れます。検査をクリアした黄金千貫は、丁寧に洗浄され選別ラインへと送られます。
 芋の選別作業は、生芋の取れる期間の8月上旬から12月上旬に行います。選別ラインでは、傷んだ箇所を切り落とします。また、次の工程である「芋蒸し」で蒸しムラがでないよう、芋を一定の大きさになるようにカットします。工場内は機械化が進んでいますが、この作業だけは人の目と手で行っています。

 こちらの工程ではたくさんの従業員の方が作業されており、大変驚きました!カット作業は難しいようですが、芋のサイズ選別は機械化できないかと検討されているそうです。

【芋蒸し】

 選別工程を終えた芋は、連続芋蒸機で芯温91度になるように約1時間かけて蒸しあげられます。その後、30分冷却を行います。蒸された芋の半数は、生芋の取れない時期に使用するため急速冷凍され、冷凍倉庫で保存されます。

【二次仕込み】

 一次仕込みでできあがった「酒母(しゅぼ)=一次もろみ」を二次もろみタンクに移し、蒸したさつまいもと霧島裂罅水を加えます。二次もろみタンクは深さが約4mのものが44本あります。この工程では、盛んに酒母がアルコールを造り出し、その活動で生じた二酸化炭素がもろみの表面で泡をたてます。もろみの中では、でんぷんの糖化とアルコール発酵が同時に起こるため、並行複発酵と言われています。
 8日間ほど経過すると、アルコールと芋のほのかな香りを漂わせた二次もろみができあがります。

【蒸留】

 二次仕込みでできあがったもろみを蒸留機に移し、蒸気を吹き込みながら攪拌すると、アルコールと水が蒸発します。これを冷やして集めた液体が焼酎の原酒です。
 蒸留の初期に留出してくるアルコールは60度くらいの高濃度ですが、最終的にアルコール度数約37度の原酒ができあがります。このなかには数百種の微量成分が含まれ、これらの相互作用によって「芋焼酎」の深い味わいが醸し出されます。

縦型蒸留機
江夏式横型蒸留機「E-Ⅱ型」

 霧島酒造では一般的に使用されている縦型蒸留機に加え、2代目江夏順吉社長が考案し、昭和53年に開発された、江夏式横型蒸留機「E-Ⅱ型」を使用しています。縦型はすっきりとした味わい、横型はどっしりとした味わいの傾向になるようです。縦型と横型の蒸留機を使用することで、焼酎の味わいに幅を持たせることができます。霧島酒造独自の江夏式横型蒸留機「E-Ⅱ型」は、今も霧島酒造の本格焼酎の味わいを守り続けています。

【貯蔵・熟成・ブレンド】

「貯蔵・熟成」によって、原酒の味わいは常に変化していきます。そのため、貯蔵タンクで熟成させる原酒をブレンダーが日々利き酒し、「貯蔵・熟成」の期間を管理しています。
「ブレンド(調合)」は貯蔵タンクで熟成させた原酒を組み合わせ、本格焼酎の味を仕上げる工程です。霧島酒造には杜氏がいません。1ブランドに1人、熟練のブレンダーが原酒を貯蔵タンクで熟成させる期間を管理し、ブレンドする原酒の割合を決定します。さまざまな角度から原酒の状態を見極め、香りと味わいを分析し、品質を守る重要な役割を担っています。

【びん詰め】

 熟成の過程を終えた原酒はブレンド後、霧島裂罅水にて20度、25度に割水され、いよいよガラスびんに充填します。今回は特別に、一升びんラインと900mlラインを見学させていただきました。

■びん詰め工程

900mlびんは、びんメーカー3社から納入、バルク包装びんの新びんを100%使用します。一升びんは空びん業者11社から納入しており、新びんと一洗いびんを使用します。

 充填温度は年間を通じて30~36℃。充填能力は1時間あたり、一升瓶ラインで約8,500本、900mlラインで約10,000本です。生産はメンテナンス期間を除いて、年間稼働日のほぼ毎日生産されます。

 びん詰め後の梱包は、一升びんは6本入りのP箱、900mlびんは6本と12本入り段ボールケースで行います。

3. 霧島ファクトリーガーデンにて質疑応答

 最後に、霧島ファクトリーガーデン内にある霧島創業記念館「吉助」にて質疑応答をしていただきました。

Q. ガラスびんの特徴のひとつ「中味の保存性」がありますが、ガラスびんのメリット・魅力は何でしょうか?

びんの魅力は、光沢のあるどっしりとした存在感かつ、やさしく落ち着いた趣の中にも品格のあるところでしょうか。様々な店格の料飲店がありますが、グレードの高いお店ではほとんど、びんの商品が置かれているかと思います。

Q. 工場内が大変綺麗で感動しました。品質管理で気をつけている点はありますか?

2代目社長 江夏順吉氏の功績が大きく、機械化・近代化を一気に進めることができました。それによって市場の要求に応えられ、ここまで成長することができました。順吉氏の求める味を追求するため、杜氏を廃止したことがはじまりです。現在は、ブレンダーが味の管理をしています。
機械化まで試行錯誤がありましたが、現在は芋の選別作業以外は、工場内にほとんど人がいません。先輩が後輩にきちんと教育し、コミュニケーションをしっかりとり工場を稼動しております。

Q. 貴社の海外展開についてお聞かせください。

2017年6月に開設した「Shochu culture site」は、2020年の東京オリンピック開催に向けて、今後増加が見込まれる訪日外国人向けに、芋焼酎の飲み方や健康面への作用、製造方法、ルーツなどをさまざまな切り口から紹介しているサイトです。霧島酒造としては、「まずは国内」ということで、国内市場に注力している状況であります。輸出の状況としては約20ヶ国で、主な輸出先は中国、アメリカ、タイ、ベトナム、インドネシアです。
2020年の東京オリンピック開催の際に、訪日外国人が日本の日常生活に根付いた伝統的な蒸留酒である焼酎を知り、ファンになって帰国していただけるように、準備を進めていきたいと思っています。

Q. ファクトリーガーデンでしか購入できないお酒はありますか?

ファクトリーガーデンと公式通販サイト「霧島通販蔵」でのみで購入できる新商品として、11月から「黒霧島MELT」を販売しています。樽貯蔵することにより、とろける甘さ、フルーツやバニラを思わせる香りを与えた、濃厚な味わいが特徴です。

Q. 本日、一升びんのラインで最初は宮崎県内限定の焼酎を充填されていたそうですが、味の違いなどはありますか?

霧島《宮崎限定》は、創業100周年という節目の年に、焼酎造りの原点を見つめ、これまで霧島酒造を支えていただいた地元宮崎の方々への感謝の気持ちを形にした商品です。ずしっと響く飲み応えと長い余韻が特徴です。

4. 見学を終えて

 見学を通して、宮崎県・都城という土地を非常に大切にされ、地域に根差した経営をされていること、常に納得のゆく最高の品質を追求する『品質をときめきに』変えるものづくりへの情熱を強く感じました。この情熱の結晶を消費者の皆様に届ける器として、ガラスびんも確かな品質でお応えしこれからも活躍していきたいと思います。

このたびは広報取材にご協力いただき、ありがとうございました。