ホールフーズ・マーケットの店内に並ぶ牛乳びん
ホールフーズ・マーケットはオーガニック食材を幅広く揃えたヘルシースーパーマーケット
日本の牛乳びんと比べサイズが大きく、つかみやすいよう凹みがついている
アメリカでは最近、牛乳びんが復活してきている。かつてはどの乳業メーカーもガラスびんを使用していたが、コストや輸送の効率がいい紙パックやプラスチックに切り替えられ、近年はごく限られた小規模メーカーだけがびん入り牛乳を製造していた。ところが今、小売店の牛乳売り場には再びガラスびんが目立つようになってきた。
そのきっかけとなったのが、ヘルシースーパー最大手の「ホールフーズ・マーケット」が自社ブランドの牛乳をびんで販売しはじめたことだ。これまで同社の牛乳は紙パックを使用してきたが、新たにガラスびんという選択肢を加え、顧客の大きな支持を得ている。
牛乳びんの復活は、アメリカ人の環境意識の高まりと深く関係している。ホールフーズでは、消費者が牛乳の価格とは別に1.25ドル(約150円)を支払ってびん代を負担し、空のびんを店舗で返却するとびん代も全額返金となる。その後、びんは同社が契約する乳業メーカーへ戻って完全に再利用される、という仕組みだ。
牛乳をおいしく冷たく保存するだけでなく、環境にもお財布にも優しいというメリットが、多くのアメリカ人の心を捉えている。これまで小規模メーカーが限られた経路で行ってきた牛乳びんの回収だが、ホールフーズが始めたことで全米の関心を集め、他のスーパーマーケットも次々とびん入り牛乳を置くようになった。今日の牛乳びん人気は、こういった回収および再利用のシステムが整ったことに支えられているといえる。
もちろん、メリットは店側にもある。まず、地球環境への取り組みをアピールできる。環境への努力が重要な企業活動であることは、アメリカでも変わらない。そして、顧客の再来店を促進することができる。ホールフーズのびんはホールフーズに返しに行くからだ。これは顧客ロイヤリティを高める重要な戦略となっている。