モザイクな街のガラスびん、リゾートのガラスびんミュージアム ~バンコク

「そのびんをください」。アジアの貧しい地域では、今でもガラスびんを売ってお金にする子どもがいる。私の暮らすタイは今やアジアのハブになろうとするほど急成長した国だが、それも都市部に限っての話。イサーンと呼ばれる東北の貧しい村々では、今もなおガラスびんは「お金になる」大切な資源なのである。一方バンコクの成長は目を見張るほど。欧米諸国から多くのビジネスマンがこの土地に暮らし始め、タイ社会にすっかり溶け込んだ華僑(中国人)、インドやアラブ系の人々そして日本を含めたアジア人が入り交じったモザイクな街を形成している。

それが最もわかりやすいのがスーパーマーケットの商品棚。ちょっとしゃれた製品はやはりヨーロッパや日本からのもので、その隣にタイの地元のものや他の外国製品がそれぞれ主張しつつも違和感なく並んでいる。そして、それらの輸入商品のほとんどはガラスびんに入っている。長い経路で輸入されるものには温度や湿度の環境変化に耐え、品質を保てる容器でなければならない。輸入品にガラスびん入りが多いのはそんな必然性があってのことなのだ。

ところで、私のお気に入りの場所のひとつにウィークエンドマーケットがある。別名J・Jマーケットとも呼ばれ食品からペットまで何でも揃っていて規模も大きい。ここに何軒かのガラスびん屋さんが軒を連ね、キッチンで役立ちそうな保存びん、薬びんや香水びん、花瓶や実験に使うような試験管まで置いてある。私は、タイ料理に欠かせない唐辛子ペーストを保存するのに使ったり各種乾物類をちょっと大きめのびんに入れ、いくつかキッチンに並べたりしているが、インテリアとしてもおしゃれでとても気に入っている。

このマーケット内を歩いてみると屋台や食品を売る店などでは多くのガラスびんが活躍している。何しろバンコクは一年を通して気温が高く湿気も多い。昔からタイの庶民の間では食品の保存にはガラスびんが一番というのが常識のようだ。

そんなバンコクでユニークな情報をキャッチした。アジアの真珠と言われ、かつてはリゾートのメッカだったパタヤに「ガラスびん」のアートミュージアムがあるという。早速訪ねてみると、空き瓶(主にワインのびん)の中に寺、仏像、船、家屋などを組み立てるびんのアートである。今では経営をタイ人に譲り、引退して田舎暮らしをしているオランダ人ピーター氏(79)が10年前に開設した。

ここには、彼がタイで暮らし始めてから作った作品300点以上が展示されている。木を細かく切って作った作品が多く素朴でなぜか昔懐かしい気分にさせてくれる不思議なミュージアムだ。

モザイクな街のガラスびん、リゾートのガラスびんミュージアム。これから夏の本格的な観光シーズン(実は雨期なんですけどね)にタイにお越しの際は、こんなユニークな視点で街を眺めてみてはいかがだろうか。また一味違ったタイが楽しめるはずだ。

村松恵美さん
タイの華僑に嫁いで早11年。日本・中国・タイの文化の違いをひしひし感じつつ注目のバンコク情報の執筆も始めた。子供の友達のお母さんに日本料理の作り方を頻繁に聞かれ逆に学んでいる今日。