2017年03月08日

広報委員会研修会レポート 養命酒製造株式会社様 工場見学

 日本ガラスびん協会広報委員会では、毎年、ガラスびんを積極的にご使用いただいているお客様や関連施設を、日頃のご愛顧へのお礼を兼ねて広報取材をさせていただいております。今回はさわやかな秋空の下、「薬用養命酒」を製造されている養命酒製造株式会社駒ヶ根工場様を訪問させていただきました。

 ところで皆さん、「くらすわ」って、何かご存じですか。
 くら諏訪?暮らす和?蔵すわ?……どれも正解です。「くらすわ」は長野県諏訪湖のほとりにある商業施設です。長野県の地産地消を目指し、おいしく安全で、自然や体にいいものを提供してお客様の生活を豊かにしたい、そんな願いをこめてつくられた「くらすわ」は、実は養命酒製造株式会社様が運営されています。
 今回は「くらすわ」にお伺いすることは叶いませんでしたが、この「くらすわ」と、「薬用養命酒」を製造されている駒ヶ根工場様は、雄大な自然に感謝し、その恵みを生かした商品をつくってお客様の健康の手助けをされているという部分で、共通の理念があると感じます。それでは、駒ヶ根工場様の見学内容をご紹介しながら、皆さんにもその理念に触れていただきたいと思います。

1. 養命酒製造株式会社 駒ヶ根工場について

 到着後、大森取締役生産本部長兼工場長、鳥羽副工場長、清水生産管理グループリーダー、木下生産グループチームリーダーにお迎えいただきました。まずは大森様より、養命酒製造株式会社と駒ヶ根工場の概要についてお話しいただきました。

 おなじみの薬用養命酒は、今から400年以上前の1602年(慶長7年)に、信州・伊那谷で創製されました。創製当初は近隣の体の弱くなられた方々に分け与えられていましたが、江戸期、明治期を通じて徐々に養命酒は評判になり、さらに世に広めるために、1923年(大正12年)に養命酒製造株式会社の前進「天龍舘」が設立されました。現在、養命酒製造株式会社は、「生活者の信頼に応え、豊かな健康生活に貢献する」という経営理念のもと、薬用養命酒を筆頭に、長年の研究成果を生かした酒類やエイジングケア商品の開発・販売、上述の「くらすわ」の運営も行っています。
 駒ヶ根工場では、養命酒製造が販売する商品の約9割を製造しています。「薬用養命酒」をはじめ、「ハーブの恵み」「フルーツとハーブのお酒」「HER HERBS」といったハーブ類を使用したお酒や、「琥珀生姜酒」、「家醸本みりん」などの商品もつくられています。また、薬用養命酒の仕込み水であり、硬度15mg/Lの超軟水である天然水、その名も「養命水」も販売しています。これは地下から汲み上げたそのままの水、豊かな駒ヶ根高原の自然に生み出されたおいしい水です。
 少し話を広げると、この地下水は地下150mから汲み上げており、雪解け水が数年かけてろ過されたものだそうです。中央アルプスの花崗岩層が、そのまま天然のろ過装置になっています。現在の採水地は、通常は砂れき層が薄くて水が汲みにくいところでしたが、井戸掘削会社の先代社長の遺言でその場所を掘ったら水が出てきたという逸話が残っているとのことです。また、この水は純水に近いため、上記商品のほか「くらすわ」で販売されている「クーラ・ナチュア」というブランドの化粧水にも使われています。
 このようにおいしい水が取れることからわかるように、駒ヶ根工場は豊かな自然に恵まれています。標高800mに位置し、中央アルプスと南アルプスに囲まれています。11万坪の広さのうち、建物が占めるのは約3割であり、それ以外は森林で、一部は「養命酒健康の森」としてお客様が散策できるようにしているとのことです。昭和47年の設立当初から見学用工場として設計していたとのことで、駒ヶ根工場の皆様がお客様のことを思う気持ちが伝わりますね。

2.「薬用養命酒」について

 場所が変わり、ホールで「薬用養命酒」の製造方法のVTRを視聴しました。このホールは壁材が木でできており、温かみのある明るい空間ですが、正面の大きな窓からは南アルプスの大パノラマが望めます。なんとも素敵な空間ですね。

 また、工場全体の設計は自然の斜面を生かしており、斜面の上から下へと工程が進んでいくとのことです。電線やパイプもすべて地下に収められており、景観を損ねないようにされています。

 それでは、「薬用養命酒」の製造方法を順を追って見てみましょう。

① 原酒 ⇒ ② 生薬配合 ⇒ ③ 浸漬・調製・抽出 ⇒ ④ びん詰め

① 原酒

 自然に磨かれた品質の良い水と国産のもち米を使い、麹を加えて一定期間熟成することにより、甘くまろやかなみりんが出来上がります。これが薬用養命酒の原酒となります。

② 生薬配合

 薬用養命酒には、芍薬(しゃくやく)、鬱金(うこん)、益母草(やくもそう)など、14種類の自然の生薬が使用されており、処方に基づき配合されます。生薬を複数種組み合わせることによって、互いに良いところを引き出し、効き目の幅が広がります。

③ 浸漬・調製・抽出

 調合された生薬を原酒に浸漬し、有効成分を抽出させます。約2ヶ月間漬け込み、その後地下に収められたパイプを通って、びん詰めラインに進みます。

④ びん詰め

 出来上がった薬用養命酒を、いよいよガラスびんに詰めます。この工程から、見学ルートより実際の作業を見学させていただきました。

a. ガラスびん搬送 ⇒ b. 充填 ⇒ c. 箱詰め

a. ガラスびん搬送

 ガラスびんは、ほこりやチリ等の混入防止のためバルク包装を採用しています。空びん検査機を通ったガラスびんは、洗浄、乾燥され、さらに口部に絞った画像検査機を通り、徹底的に品質確認されます。

b. 充填

 検査をクリアしたガラスびんに、ついに薬用養命酒が充填されます。この工程は、クリーンルームで行われています。クリーンルームはNASAクラス1000、1立方フィート当たり0.5ミクロン以上の粒子の数が1,000以下という、注射器を作るレベルの衛生管理を行なっているそうです。衛生面とびん破損をなくすという理由から、びん口に触れないように、ノズルから直接薬用養命酒を充填していきます。充填後はすぐにキャッピングを行ない、目視検査員により液内に不純物がないか1本ずつ検査されます。目視検査に合格した商品は、キャップシールが被せられて箱詰め工程に向かいます。

c. 箱詰め

 ラベルを貼られた商品に、まずは計量カップが載せられます。薬用養命酒1回の分量20mlを計るカップです。この計量カップを載せる機械は自社開発したそうで、装着前にキャップを貯める装置の構造やキャップの排出方法、装着角度等、苦労されたとのことです。

 このあと、別ラインで製函された箱が流れ込み、商品は説明書と一緒に箱詰めされます。この説明書は添付文書や納書と呼ばれ、医薬品には絶対に添付しなければならないものです。この箱詰めの機械の起点は説明書の挿入となっており、絶対に添付漏れのないように管理されているとのことです。
 また、別ラインにある箱の搬送装置は自社開発されたそうで、薬用養命酒の赤い箱がずらっときれいに並んでいました。実は製函前の箱の状態を整えておくことが、上手く製函するポイントとのことでした。
 箱詰めされた商品は、出荷用の段ボールに入れて完成となります。この段ボール入れの工程にも工夫があり、製函される前の段ボールは重ねてひもで縛ってありますが、このひもを切る機械は数年かけて何度も改良したとのことです。今では、段ボールを傷つけることなく一瞬でひもを切ることができます。
 箱詰め工程だけでも、駒ヶ根工場で自社開発されたり改良が為された機械が多く稼働しており、品質が良く安心安全な商品をお客様に届けようという、工場の皆様の熱意が伝わりました。

 製造工程を見学した後は、薬用養命酒、ハーブの恵み、フルーツとハーブのお酒、琥珀生姜酒などを試飲させていただきました。試飲用の薬用養命酒はよく冷やしてあり、常温よりも口当たり良く飲みやすく感じました。他の商品も、そのまま飲むのはもちろん、ハーブの恵みはお湯割りにしたり、琥珀生姜酒は炭酸割にしてジンジャーエール風にしてもおすすめとのことでした。どの商品も体にいいのはもちろん、きれいな水と素材の味わいが生かされており、とてもおいしくいただけました。おいしく飲みながら体にも良いなんて、最高ですね。

 試飲スペースには、お客様の声を紹介しているコーナーもありました。クリアボックスにはお客様からの手紙がぎっしり。そこからランダムに抽出して、タブレットに自動で映し出されていきます。年間4~5万通のお声をいただくそうで、社員はお客様からの感謝の言葉を励みにしているとのことです。

3. 養命酒健康の森

 ここで、「養命酒健康の森」内のカフェスペースに移りました。「養命酒健康の森」は、駒ヶ根工場に見学に来られたお客様に、場内の豊かな自然を楽しみリフレッシュしてもらえるようにつくられました。敷地内には、かつての酒蔵を移築して改装した記念館やカフェがあり、薬用養命酒の歴史に触れながら、自然の中で喫茶を楽しむことができます。年間約10万人のお客様が訪れるそうです。この記念館で、最後に質疑応答の時間をいただきました。

4. 質疑応答

ここからは鳥羽副工場長にお答えいただきました。

■薬用養命酒ロングセラーの秘訣は?

 いつの時代も健康でありたい、というお客様の願いが、薬用養命酒を今日まで支えていただいているのだと思います。薬用養命酒は、大事なところはそのままで、時代のニーズに合わせて必要な部分を変えています。それは中身であったり、宣伝手法であったりしますが、もちろん根本的な効き目は変えていません。効能や効果の表現の仕方は、時代によって法律等が異なるので変わっていますが、今は「胃腸虚弱」「食欲不振」「血色不良」「冷え症」「肉体疲労」「虚弱体質」「病中病後」の滋養強壮となっています。
  ちなみに、薬用養命酒の処方の現存するものは江戸時代後期のもので、それ以前のものは東京大空襲で焼失してしまいました。
 

■薬用養命酒の特徴的な“ダルマ型”形状に、こだわりはありますか?

 ダルマ型のガラスびんは、創製当時に使用していた、仕込みの甕(かめ)の形状を踏襲しています。独特な形状であり、大切なアイコンと考えています。消費者調査の結果、このガラスびんのシルエットで薬用養命酒を思い浮かべる人が多いこともわかっています。

■ガラスびんを使い続けていただいている理由をお聞かせください

 薬用養命酒は医薬品なので、ガラスびんの優れた気密性や原料溶出の不安がないことを利点ととらえ、長年ガラスびんを採用しています。また、ガラスびん特有の高級感やあたたかみも、お客様にプラスのイメージを与えていると思います。
 製造者側の視点では、ガラスびんは原料溶出の不安がなく、他容器と違って煩雑な試験が不要であるため非常に扱いやすい包材と言えます。

■公式キャラクター「養命酒のびん」君について教えてください

 お客様に親近感を持ってもらいたいという理由で、「養命酒のびん君」「養命酒の箱さん」を数年前に誕生させました。薬用養命酒のびんや箱に手足が生えただけという、他と一線を画したユニークなキャラクターで、お客様の心に響いているようです。

■薬用養命酒を愛飲しているお客様から、ガラスびんの使い勝手に関する声があればお聞かせください

 薬用養命酒は幅広い世代の皆様に愛飲いただていますが、特に高齢者の方や女性にご好評いただいています。東洋医学に基づき、冷えや体質からくる不調を改善し、体内の恒常性のバランスを整えます。寝る前に飲むと寝つきがよく、寝起きもいいというお声もいただいています。
 ガラスびんの形状は認知されており、広く愛されていますが、重さがあることや、元々容量が多くて持ちづらいので注ぎにくいことなど、少し不便に感じられることがあるようです。軽量化や強度アップがもっと進んで、軽くて割れにくいびんができれば嬉しいです。また、地域によってガラスびんの分別方法が異なったり、回収の頻度が少ないことがあるようです。例えば、スーパー等の小売店を拠点にガラスびんを回収する仕組みができればとても便利ですので、検討が進めばよいと思います。

■養命酒製造株式会社の今後の展望をお聞かせください

 現在薬用養命酒をご愛飲いただいているお客様に加えて、新たなユーザーの獲得が課題です。そして、そこからさらに“養命酒のファン”になっていただけるよう、商品開発や品質管理はもちろん、購買システムを拡充し通信販売を充実させ、様々な環境のお客様にご満足いただけるようにしたいと思います。ガラスびん容器を採用しているという点においても、ガラスびんの癒しやかっこよさ、重厚感をアピールして商品の魅力を高め、ファンを増やしていきたいと考えています。
 また、海外の販路拡大も目指しています。薬用養命酒は昔から各国に輸出していますが、昨今は台湾での拡販に注力するために駐在員を派遣しています。台湾を拠点に四方に展開させていきたいと考えています。海外で販売する際、価格面がひとつのネックとなっていますが、アジア圏では元々薬酒の文化がありますし、日本製であることで一定の評価をもらえるので、そこをうまくマッチングさせていきたいと思います。

 以上で、取材は終了です。今回、養命酒製造株式会社駒ヶ根工場様を取材させていただいた中で、「駒ヶ根の自然」「健康への願い」という2つのキーワードを強く感じました。すべての人々の健康と長寿を願った創業者の思いを、従業員の皆様が長年受け継いでいき、いま、この豊かな自然に囲まれた駒ヶ根の地で体現されているのだと思います。
 ガラスびんは確かな品質で、薬用養命酒に込められたこの思いを、これからも消費者の皆様にお届けしていきます。

このたびは広報取材にご協力いただき、ありがとうございました。