2017年04月28日
業務推進委員会がビバリッジジャパン誌のインタビュー取材を受けました
特別インタビュー:日本ガラスびん協会
消費者はガラスびんを求めている
日本ガラスびん協会 業務推進委員会
石塚硝子,磯矢硝子工業,第一硝子,東洋ガラス,日本耐酸壜工業,日本山村硝子
日本ガラスびん協会によると,2016年のガラスびん出荷量(重量)は112万4,799トンで,前年比97.7%となった。ピーク時の約240万トンに比較し,その半数以上の市場を失ったことになる。このままガラスびん市場は縮小を続け,消費生活に見られなくなってしまうのだろうか? そこで同協会を運営している委員会の一つである業務推進委員会に,ガラスびん市場の復活に向けた活動を聞いた。
ー日本ガラスびん協会の概要を改めてご紹介ください
日本ガラスびん協会は,ガラスびん製品の利用啓発と利用情報の収集・提供等を目的に1952年に設立されました。当協会には,正会員として石塚硝子,磯矢硝子工業,第一硝子,東洋ガラス,日本耐酸壜工業,日本山村硝子の製びん大手6社,また準会員として中小製びんメーカー7社,賛助会員としてびん商や原料サプライヤーなど39社が加入しています。現在の会長は日本山村硝子の山村幸治社長です。
当協会は,理事会と各種の委員会で運営されています。このうち業務推進委員会は正会員6社で構成されており,協会運営に関する全般的な活動を補佐・推進しております。
ー協会の活動内容は?
当協会では,ガラスびんの広報への取り組み,ガラスびん業界としての環境への取り組みの2つを柱として活動を行なっています。なかでも広報活動は,ガラスびんの強みと魅力を融合させた訴求を行なっており,ガラスびんの強みと魅力を社会に発信すべく活動しています。ガラスびんの魅力を高め,需要を創造することが目的です。
ー市場環境はいかがでしょうか?
2016年のガラスびん出荷量は前年比97.7%となり,2015年の102.4%から一転し,再び減少に転じました。2014年との対比では100.0%となるため,2015年に生じたプラスの需要が元に戻ったことになります。これはウイスキー,洋雑酒などのヒット商品の反動減が主な要因です。
2017年も市場環境は厳しいと予測しています。一部の品種で他容器化が進んでいることから需要減が予測されガラスびんの市場環境は,厳しくなっています。
ーそれだけに需要創造は喫緊の課題です
限られた協会の活動予算を有効活用し,皆で知恵を出し合って広報活動を行なっています。現在の活動は,協会WEBサイト,ガラスびん応援隊,Facebookファンページといった口コミを利用した広報宣伝活動をしています。
また2004年スタートで13年目を迎えた「ガラスびんアワード」,2012年スタートで6年目を迎えた「びんむすめプロジェクト」といった歴史ある活動も継続して行なっています。「びんむすめプロジェクト」は,専用WEBサイト,動画サイト,びんむすめをラッピングした6台の「びんむすめトラック」を展開しています。また他団体とのコラボ企画も行なっています。
「ガラスびんアワード」は,2004年に第1回「ガラスびんデザインアワード」として始まったもので,ガラスびんデザインの魅力を内外にアピールしてきました。2009年からは「ガラスびんアワード」へと改称し,デザインだけではなく,広くガラスびんの普及に貢献している製品を表彰するようになりました。しかし開始から13年が経過したことで,業界内の表彰イベントから広く一般消費者にも認知してもらえるイベントへと進化を検討していきます。
ーガラスびん協会のイベントは工夫に満ちています
他団体とのコラボレーション企画も行なっています。2016年は「銭湯×ガラスびん×地サイダー&地ラムネ」の第3回目を行ない,東京と大阪の合計40銭湯が参加しました。この企画では,1湯あたり平均500本,合計では2万本が販売されました。
この銭湯企画は,2017年はさらにパワーアップを予定しており,すでに兵庫県や京都府の参加が決まったほか,和歌山県や奈良県も参加を検討しています。銭湯側も来客の契機にできると前向きですし,ラムネ・サイダー市場の活性化にも役立っています。
ーなかでも「ギャラリーカフェ」企画は異色でした
「びんむすめギャラリー with Glass Bottle Cafe」は,びんむすめプロジェクトの5周年を記念して2016年11月16日〜12月15日の期間限定で実施したものです。東京・青山の「hanami 表参道」でガラスびんとびんむすめのギャラリー風カフェを演出しました。日本各地で撮影したガラスびんと,そこで働くびんむすめの写真を鑑賞していただきながら,ガラスびんに触れ,ガラスびんの良さを知ってもらう場として位置づけました。店内では,ガラスびんに入ったフードやスイーツ,ドリンクなど60種類以上のメニューを用意しました。またワインイベントも開催し,ガラスびんの魅力を発信し続けました。
これまではWEBやSNSといった仮想空間でガラスびんを訴求してきましたが,このカフェを行なうことで実際にガラスびんに触れたり,スイーツなどをガラスびんで味わうことで,仮想空間だけではなく実体験としてガラスびんを体感してもらえました。カフェには高校生など若者が来店し,写真SNSであるインスタグラムなどを使ってガラスびんの体験を発信し,680万人もの人々にリーチしたと推定しています。
こうした動きを見ますと,若者を含め消費者の皆さんはガラスびんに興味があり,ガラスびん入り製品が良質であることを理解しているといえます。また,一定数のガラスびんファンが存在することも明白です。
しかしガラスびん製品に触れる機会が少ないことが,ガラスびんの消費減退の原因と考えられます。ですからガラスびんの見せ方を変えれば市場の再拡大が期待できると,委員の皆が手応えを感じています。
2017年はびんむすめプロジェクトの6周年になります。各地のびんむすめは実際の製品生産者でもありますから,びんむすめの製品を実際に展示・販売することで,より身近にガラスびんを感じ,消費してもらえると期待しています。
ーリサイクルにも課題があります
消費者はガラスびんが再びガラスびんに戻ることを知っています。
現状では,ガラスびんの回収は自治体回収に頼らざるをえませんので,スーパーなどの店頭回収が増えればガラスびんはより身近になると思います。
ーありがとうございました
聞き手:ビバリッジジャパン・埴 義彦
出典:ビバリッジジャパン誌 NO.423より