2013年06月05日
広報委員会研修会レポート 大関株式会社様 工場見学
桜の花がチラチラと舞う4月上旬。春のさわやかな陽ざしの中、大関株式会社本社工場を訪問させていただきました。広報委員会では、毎年ガラスびんを積極的にお使いいただいているお客様や関連施設を訪問させていただいています。
大関といえば、“ワンカップ大関”。前回の「ガラスびんアワード2011」において、日本ガラスびん協会特別賞を受賞されました。「カップ酒」という新分野を開拓し、ロングセラー商品に育て上げ、長年にわたるガラスびんご愛顧に感謝し授与されたものです。
今回は、そのお礼を兼ねて、お酒造り製造工程並びに「ワンカップ大関」の充填ラインを見学する機会をいただきました。
<ご対応者>
- 経営企画部資材グループ課長 谷口 泰夫 様
- 製品部瓶グループ課長 小倉 洋史 様
- 製造部醸造管理グループ主任 中田 幸伸 様
<見学内容>
- プレゼンテーションルームにて会社紹介。
- 原酒製造工程(寿蔵)の見学。
- ワンカップ大関充填ラインの見学。
1) 会社紹介について
会社紹介DVD鑑賞後、谷口課長様よりご説明をいただきました。
<“大関”の由来>
正徳元年創醸当初の銘柄は“万両”。大阪を中心に酒販売をおこない、廻船によって江戸でも日本酒を販売。
1884年:銘柄を「万両」から「大関」へ変更。「大関」には「常に高みを目指し、横綱を越えるように努力し続ける姿勢を持つ」という意味が込められているとの事。大関様では、これを “魁(さきがけ)” 精神として掲げ、『「魁集団」への躍進』を社是に、その精神と考え方が脈々と受け継がれているそうです。
<大関酒造今津灯台>
廻船による商売が拡大した為、5代目長兵衛が私費を投じ、「今津灯台」を建設。航海の安全を祈願しました。※大関酒造今津灯台は、西宮市指定重要文化財に指定されています。
<原料について>
|最高品種の酒米 「山田錦」
お酒づくりに使用されている原料は主に米。普段私たちが食している飯米とは異なり、酒づくりに適した「酒米」です。主に酒米の最高品種である「山田錦」を使用。山田錦は粒が大きく色白の心白米。酒造りで欠かせない麹菌と結びつき(破精込み)やすく、醸造に適した品種なのだそうです。
しかし、栽培するには手間が掛かるとの事。食米の稲よりも20cm程度長くなり、台風や嵐で倒れやすい。また病気にもかかりやすいのだそうです。
|味を左右する「水」
使用する「水」によってお酒の味わいが大きく異なります。大関様がある灘地区(西宮~神戸)では「宮水」と呼ばれる水が採水されます。六甲山の伏流水により供給された宮水は、ミネラルの成分が豊富。麹菌の活動を助け、力強いお酒ができる水なのです。
2)原酒製造工程(寿蔵)を見学
見学用の白衣と帽子をお借りして装着。いざ工場見学です。入口をくぐるとひんやりと涼しさを肌に感じます。場所によって温度分けされているのだそうです。これは雑菌の活動を弱め、繁殖を防ぐためのもの。15℃~20℃に管理されています。
醸造には幾つもの工程があります。現在は主にコンピューターによって自動管理されています。その中でも、仕込に使う蒸米の具合や発酵の進行具合は、杜氏(とうじ)の方が直に確認します。長年の伝統と最新技術のコントラストが新鮮に映りました。この二つの融合があって、日本酒の美味しさが保たれていると感じました。
寿蔵
魁精神が掲げられています。
<醸造の工程>
1.洗米(10分程度)
2.米を浸漬 (一晩:5時間~6時間)
- 米分け→麹用/仕込み用
- 麹は10℃くらいで管理。(管理温度が高いと雑菌が繁殖するため)
3.蒸米をつくる (翌日に蒸し始め、1時間で3,000kg蒸す)
4.仕込(麹・蒸米・酵母・水を合わせる)
<三段仕込み>
- 1日目:初添 “はつぞえ” (麹・掛米・水を仕込)
- 2日目:踊 “おどり”(酵母の活動を元気にさせる為、仕込を休み寝かす)
- 3日目:仲添 “なかぞえ” (麹・掛米・水を追加)
- 4日目:留添 “とめぞえ” (麹・掛米・水を追加)
因みに醸造タンクの内側はガラスのコーティングがされているそうです。酒造りにもガラスが関われている事に、なんだか嬉しさを感じます。
5.もろみの完成。熟成させる(20日間程度)
6.原酒の完成
7.原酒をろ過
8.火入れ
9.貯蔵(概ね3ヶ月~6ヶ月)
10.商品ごとにブレンド
11.びん詰
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工場内に祭られている神棚。松尾大社(京都)に春と秋に参拝します。
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搾り機を見学。清潔に清掃されています。
蒸米から麹へ。真っ白さが印象的でした。
蒸米をつくる大きな蒸器。美味しそうな香りが立ち込めます。
説明いただく中田主任様
仕込みタンクを見学。沢山のタンクが並びます。
タンク内を拝見。プチプチと泡を立ているのは、酵母が元気に活動している証拠。
3)ワンカップ大関 製造ライン見学
次にワンカップ大関の製造ラインを見学しました。ワンカップは専用の製造ラインで生産されています。180ml容量を1時間に6万本生産。1日最大40万本の生産が可能。カップびんが触れ合い、カチンカチンと音を立て、高速にラインを流れます。協会の私たちには聞き慣れた音なので、つい「がんばれ」と親近感が沸きます。こちらは、「寿蔵」の雰囲気とは対照的に、人の姿はあまりなく機械が並ぶ近代的な工場という印象です。
各セクションにはセンサーによる製品検査が行われていました。不具合の起こった製品は、生産セクションごとにセンサーによって、除外されます。品質維持のために、センサーの感度を若干高めに設定しているとの事。それは「お客様の手に安心してワンカップを味わってもらいたいから。採用しているガラスびんは、中味に安心なところが良いですよね。ガラスびんメーカーさんもぜひ、びんの品質維持にがんばってください!」と暖かな励ましをいただきました。
ラベルはロール式で納品。1ロール:22,000枚分との事です。カップびんに仕上がった出来立てのワンカップを持たせてもらいましたが、持ち続けていられない程、ずいぶんと熱いことに驚きました。
ワンカップ製造ラインをご説明いただいた 小倉課長様
セクションごとの検査センサーをくぐり、ラインを流れていきます。
ガラスびんがカチンカチンと聞き慣れた音を立てながら、ラインを流れます。
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つぎつぎとカウントされていきます。
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箱詰めされているワンカップ。
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広報委員からの質問に丁寧に答えていただきました。
最後に質疑応答の時間にうつり、ご案内をいただいた皆さんとディスカッションをおこないました。
Q1:酒造りの魅力はなんでしょうか?
A1:酒造りの伝統を次世代に繋げて行く事は、大きな責任と感じています。伝統の重みに関われる事が魅力と考えています。
Q2:工場がとても綺麗と感じました。
A2:ありがとうございます。お客様の手元に届く商品なので、品質にはとても気をつけています。先程も説明の中で紹介した「魁」の精神にのっとり、常に向上心をもって取り組んで行きたいと考えています。
Q3:びん工場での製品検査は、主に女性が担当しています。大関様はいかがでしょうか?
A3:はい、当社でも検査は女性が担当しています。集中力が持続し、僅かな時間の中で微細な欠点を瞬時に発見するのは、スゴイなといつも感じています。
Q4:杜氏さんになるには、何か資格が必要ですか?
A4:弊社では、丹波流の技術を伝承し杜氏組合から認定された丹波杜氏が酒造りを行っています。
Q5:皆さん、やはりお酒はお強いのですか?
A4:(笑)飲めない人もいますよ。しかし、たぶん普通の人よりは強い?と言うよりお酒は好きですよね。入社してだんだん強くなっていくようです。酒造りをしているメンバーの方が強い人が多い印象です。
当初、2時間の予定を更に30分延長していただき、酒造りに対する想いやこだわりを感じながら、ご説明を聞くことが出来ました。自動化された工場が多い中、お酒造りは人の感性や豊富な経験に拠る所が多く、醸造技術というデジタルでは成し得ない部分に伝統の技を感じると共に人の温もりと新鮮さを感じる工場見学となりました。
手間が掛かり、繊細な日本酒。安心・安全に日本酒の美味しさを密封出来る容器は、やはりガラスびんであることを改めて感じました。これからも、日本酒と相性の良い容器は「ガラスびん」と自信を持って、推奨してまいりたいと思います。
-以上-
最後に正面入口にて集合写真。とても充実した見学となりました。谷口課長様(左1人目)、中田主任様(左3人目) 、小倉課長様(中央)