2005年10月01日

海外情報(2005年10月分)

海外情報-欧州ニュース
1.EUガラス業界概況

(筆者Frederic van Houte氏; CPIV:Standing Committee for Glass Industry在Brussels、この委員会は、EUガラス全業界を代表し、EU政府と折衝するために常設されている。)

1  ガラス製品の生産・需要等

EU25メンバー国は世界最大のガラス市場である。ここには約13,000の会社があるが、集中化が著しく、その生産の80%が約10の従業員1000人以上の多国籍企業で占められている。残りの会社は中小規模ではあるが主に専門化されている。
リストラと、会社統合・合併・提携等の手段により、企業は強力となった。その結果、中欧、東欧に止まらず、広く世界へ投資を行って来た。2004年前半には成長がスローダウンしたが、これらの合理化のためにガラス産業は本年には成長を取り戻すと予測している。
生産量の国別では、ドイツがEUの25%のシェアでトップを占め、フランス、イタリア、英国が僅差で続いている。
数年先までの欧州市場はスローな成長の見通しではあるが、新メンバー国がその成長の中心となろう。ここでは人口増加と技術改善が見込まれるからである。しかし域内の生産増加の促進力となるのはEU外への輸出であろう。域内では生産コスト上昇、法による規制強化があるために、投資がEU外に向っていることは考慮しておくべきである。
輸出入については、現状では域内諸国間が大半を占めるが、将来増加するのは域外との取引となろう。製品種類によって輸出が占めるウエイトが異なる。テーブルウェアや特殊ガラスは大きく、ガラス容器は小さい。しかし中身入りガラス容器を含めれば状況は変わる。輸入については、東欧、極東では品質も良くなり、低コストであるので注目すべきである。



2  雇用

安い輸入製品との競争のために、ガラス産業は画期的な集中化、生産ラインの合理化を行って来た。この結果、ここ数年、雇用数は減少し、生産性は着実に上昇した。現在の雇用者数はEU-15で162,000人、EU-25で229,000人である。この雇用減のトレンドは今後も、特に新加入国においてより強く続くと見込まれる。



3  展望

欧州のガラス産業は、世界の他地域に比し、強い法規制、高い税・人件費・エネルギー・原料コストの負担を負い世界の競争場裏で試練に立たされている。しかし、数年に亘り積み重ねてきた企業努力を考慮し、2006年まではポジティブに考えている。

 

2.英国

(寄稿・British Glass : 英国ガラス産業界を代表する業界団体、40年の歴史を持つ。リポートは、ガラス製品品種別に書かれているので、Glass Container に関する部分のみ抄訳。)

英国全ガラス製造業界は、エネルギー価格の高騰、政府規制への対応、海外からの競争に悩まされてきた。
2004年、ガラス容器の需要は幸いに安定していた。(生産量2,069千トン、前年は2,033千トン)。しかし、フレーバーアルコール飲料は欧州大陸、中近東からの輸入ブームの影響を大きく受けた。
リサイクル率は各種の促進策で更に伸び37%に達した。(注:欧州の中ではなお低い。)しかし、色選別カレットは不足している。自治体の色無選別収集のトレンドが伸びれば、この状況の更なる悪化が懸念される。
業界内の問題では、Quinn社の新工場建設がある。最初の計画として、600トン/日
2窯の建設が進んでいる。Rexam社が英国の工場(元のRedfern)をArdagh社(Rockwareの親会社)へ売却したニュースは業界を驚かしたが、Quinn社参入後の業界状況を睨んだ結果と思われる。

UK glass manufacturer's sales of glass containers 英国業界ガラスびん売上高
国内売上 輸出 輸入
1000pound (億円) 1000pound (億円) 1000pound (億円)
2004* 615,500 約1,260 119,000 約240 310,479 約640
2003 622,014 1,280 121,138 250 301,954 620
2002 628,795 1,290 97,737 200 302,753 620
データソース:Office of National Statistics,  * British Glass estimate
注:1pound=205円で換算

 

 

3.イタリア

(寄稿・Istituto Italiano Imballaggio イタリア包装協会、在ミラノ)

1  飲料の消費動向

イタリアの2004年全飲料の消費量は20,435千klで、2003年比では3%減、2002年比では6%増であった。2004年の減少は、2003年の異常な伸び(天候要因等による)への反動と、国内消費の停滞による。2005年は4~5%増の良い年になると予測している。
2004年の内訳を見ると、アルコール飲料は4,955千kl,、前年比2%増、2005年は更に1.5~2%の増加を見込んでいる。
ノンアルコール飲料は15,480千klで、前年の16,170千kl比4.3%減となった。しかし2002年比では、7%増となっている。2005年は5~6%増を見込んでいる。ミネラルウォーターがノンアルコール飲料の約65%と極めて高いウェートを持っている。


2 容器素材別動向

アルコール飲料では、ガラスびんが76.5%と圧倒的シェアを持ち、しかも2001年以降でも4%増加している。スピリッツ、ベルモットは勿論、ビールでも高いシェアを維持している。高品質の飲料では明らかにガラス容器が好まれている。
ノンアルコール飲料では、PETが75%を占め、なお増加の傾向にある。ガラスはフルーツジュースなどを中心に依然17.5%のシェアを維持している。缶は炭酸飲料、ティー飲料などで2.5%のシェアを持つに過ぎない。
何れの素材容器も、EUの環境施策と、消費者嗜好に応えて、軽量化と、新形状の導入が行われている。

注:日伊比較

人口( 万人)

品種別

消費または生産量
(千kl)

一人当り年間
(L)

ガラスびんシェア
(%)
日本 12,768 アルコール飲料 9,287 73 25.5
ノンアルコール
飲料
17,235 135 2.8
合計 26,522 208 10.7
イタリア 5,740 アルコール飲料 4,955 86 76.5
ノンアルコール
飲料
15,480 270 17.5
合計 20,435 356 45.1

注:データソース
日本:アルコール飲料・日刊経済通信社刊酒類食品月報等(但しガラスびんシェアについては清酒、ビール、発泡酒、焼酎甲類以外は協会推定)
ノンアルコール飲料・全国清涼飲料工業会
イタリア:本リポート